女たちの選択 Vol.7

「田舎の開業医になんか、嫁ぐんじゃなかった…」東京を諦めきれない元・港区女子の後悔

沙耶が東京を捨て、高松へやってきたのは2年前。彼女が30歳の時だ。

高松で代々開業医を営む6歳年上の医師と見合い結婚をしたことがきっかけ。

「私自身はもともと大阪の出身なんです。ただ高校生の頃から東京への憧れが強く、大学はあえて周囲の反対を押し切り都内の女子大に進学しました。最初は知り合いなんて誰もいなかったけど、社交的な性格に助けられましたね。すぐに学内でも派手なグループに属するようになり、必然の流れでいわゆる港区女子になっていました」

沙耶は当時、両親からの仕送りで大塚のマンションに暮らしていた。

授業の合間に学校近くのカフェでアルバイトをしたこともあったが、早々に六本木に繰り出すようになると、地道なアルバイトよりよっぽど、誘われるがまま飲み会に参加し、タクシー代をもらった方が稼げることを知ってしまう。

実家から援助があるとはいえ一人暮らしでお金のなかった沙耶は、友人の紹介で女子大生を売りにしたお店にも手を出した。

都内の有名大学に通う女子大生が働き、客層も悪くなく手っ取り早く稼げるこの仕事。皆けっして公言はしないが、早熟な女子大生の間では人気のアルバイトだったのだ。

「アルバイト先にやってくる、若くして余裕のある男性といえばITや飲食系の経営者か、外銀マン。少し年上になれば一流企業勤めのサラリーマンもいたけど…この時の経験から、私は結婚するなら経営者か外銀マンだって心に決めていたんです」

大学卒業後、沙耶は某ハイブランドに販売スタッフとして入社。

職場近くで暮らすため、家も恵比寿に引っ越した。自分の給料だけでは難しかったが、優しい両親がしばらく仕送りを続けてあげると言ってくれたのだ。

しかし女性ばかりの職場は想像以上に陰湿で、それでなくても見た目の派手な沙耶は、お局たちから目の敵にされてしまったという。

「あの頃のことは、もう振り返りたくないですね。とにかく早く結婚して仕事を辞めたい。そればかり考えていました。今から思えば、その焦りが私の判断を鈍らせたのかもしれません」


経営者か、外銀マン。

そのどちらかをターゲットにして婚活に励んでいた沙耶だったが、何人かお付き合いには至るものの、なかなか結婚というステージに進まない。

相手にその気がまるでなかったり、既婚者だったり、逆に沙耶の方が今ひとつ本気になれなかったり。

しかし社会人4年目の26歳のとき。ついにこの人だ!と思える相手が現れたという。

「10歳年上で、芸能人なんかがお忍びで通う高級レストランのシェフでした。料理の腕だけでなくビジネスセンスもあって、カフェ形態の店舗をプロデュースしたり、コンビニスイーツの監修をしたり。芸能人でいうと田中圭みたいな母性本能くすぐるタイプの見た目で、年上だけど可愛いところもあったりして」

おそらく沙耶は、彼のことを本気で愛していたのだろう。

懐かしさに目を細めながら語るその表情は、これまでになく柔らかい、艶のあるものだった。

しかし次の瞬間、沙耶は不意に声のトーンを下げる。

「私もなぜ気がつかなかったのか自分でも不思議なんですけど、付き合って2年が経ったある日…彼の家で鉢合わせしたんですよ。ええ、そう、浮気相手に。しかも私に隠れて半年以上も関係を続けていたって聞かされた時は、頭に血が上って、どうにかなってしまいそうでした」

−私と彼女、どちらを選ぶの−

沙耶はその場で、彼にそう迫った。するとその質問に彼は、あろうことか浮気相手の名を口にしたのだ。

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