女たちの選択~その後の人生~ Vol.5

25歳でまさかの解雇通告を受けた東大卒の女が一変、“教育ママ”と化した理由

茨城県の進学校を卒業した佳代は、東京大学文IIにストレート合格。

帰国子女でもなければ留学経験もない彼女だったが、独学でネイティブ並の英語力を身につけ、第一志望だった外資系投資銀行の内定を掴んだのがおよそ10年前のことである。

「当時は“働き方改革”なんて言葉は存在しないし、深夜早朝問わずの呼び出しも当たり前。呼び出されたらすぐオフィスに出向かないとならないし、はっきり言って狂ったように働いていましたね。でもそれが当たり前だった。そんな時代だったんです」

人間らしい生活などできやしない。そんな過酷な状況に置かれながらも、佳代は仕事を楽しんでいたという。

「若かったし、体力もありましたから。それに1年目から1,000万円を超える年収はやはり魅力的でしたね。しかも、上には上がいる。元来負けず嫌いな性格ですし、もっともっと…貪欲に、必死で食らいついていました」

しかしそんな佳代に、ある不運が襲った。

まさかの解雇通告


入社2年目の夏のこと。彼女は突如、解雇の対象になってしまったのだ。

「ショックでした。長年努力し続け、やっと手に入れた輝かしいキャリアが一瞬で砕け散ったわけですから。人生初の挫折、と言っていいかもしれません」

佳代はどこか落ち着かない様子で、二、三度瞬きをする。

当時の記憶が蘇ったのだろうか。暗澹とした表情で明後日の方向を見つめ、暫し黙り込んでしまった。そしてゆっくりと、言葉を続ける。

「そんなとき、私をそばで支えてくれたのが今の夫・毅(たけし)です。東大の同級生でもあり、別の会社ですが同業のバンクに努める彼は、ずっと私のよき理解者でした」

毅と佳代は、大学卒業後、外資系投資銀行で働くようになってからぐっと距離が近くなったのだという。

外銀の世界に身を置くと、その他業界のサラリーマンとは金銭感覚がずれてしまう。行く店や話題も違ってしまうため、自然と同業同士で集まるようになるのだ。

「とはいえ毅とは、“そういう”関係ではなかったんです。大変さを分かち合える同士というか、戦友というか。…けれど急に解雇を宣告され、私も相当弱っていた。毅と男女の仲になったのは自然な流れだったと思います」

そしてこの時、佳代の身にもう一つ予想外の出来事が起きた。

毅との間に、子どもができたのだ。

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