モテる男 Vol.4

「じゃ、付き合おっか」脈ナシからの大逆転。モテる男の告白を引き出した、女の手腕とは

奇跡が起きた夜


「やっぱ摩季ちゃんって面白いよね」

遮ることなく見渡せる鎌倉の海と、美しいオレンジのサンセットをバックに、勇輝の笑顔が眩しい。

一瞬見惚れてしまった後で、私はハッと我に返る。

−面白いって…私、なんか変なこと言ったかな。

急いで今日の一日を脳内でプレイバックしてみる。

朝のうちに彼がレンタカーで迎えにきてくれ江ノ島へ。『とびっちょ』で生しらす丼を食べ、のんびり江ノ島を回ってから、サンセットに合わせてここ、七里ヶ浜の『リストランテ・アマルフィイ』にやってきた。

まるですでに出来上がったカップルのようなデートだが、不思議なことに何もかもが自然。会話のテンポも合うし、何よりお互いにとても気楽なのだ。

まあそれも、勇輝が女慣れしているからに違いない。私はそんな風に思っていたのだけれど、どうやら別の理由があったらしい。

「いや、なんかさ、ほぼ初対面なのに気を使わなくて済むんだよ。なんでだろーって考えてて気づいたんだけど、摩季ちゃん、俺の姉ちゃんに似てるわ」

勇輝は無邪気にそういうと、ひとり楽しそうに笑った。

「姉ちゃん…?そうなの、姉ちゃんこんな顔?」

褒められているのか、どうなのか。それはよくわからなかったが、勇輝が楽しそうなので良しとしよう。

「いや、顔っていうか仕草とか雰囲気の話。とにかく居心地がいいよ」

居心地がいい。それは私も同感だった。実際、勇輝とのデートは想像よりもずっと楽しくて、二人の距離がぐっと縮まる手応えもあった。

−勇気を出して誘ってみて良かった。

私はデートの最中、何度も喜びを噛み締めていたのだ。


ディナーの後は、勇輝がちょっと歩こうと言って、私たちは海辺へと向かい砂浜に降りた。

夜の海は暗く静かで波音だけが響く。湿った空気を吸い込むと、どこか懐かしい匂いがして感情が揺さぶられた。

「ごめん。靴、大丈夫?」

思い出したように勇輝が私を振り返る。

ヒールじゃなくウェッジソールだったから、砂浜もなんとか歩けた。しかし「大丈夫」と答えたその直後、私は「あっ」とバランスを崩してしまった。

「危ない」という声が聞こえたと思ったら、勇輝の腕に包まれていた。ふいに触れた手の力強さに、心臓が跳ねる。

「私、相原くんのことが好き…」

その瞬間、思わず想いが溢れた。

考えるより先に言葉が出て、言ってしまった後で自分が慌ててしまう。

すると彼は、私を抱き寄せたまま思いがけぬセリフで応えたのだ。


「じゃ、付き合おっか」

−え?今、何て…。

しかし言葉の意味を理解する前に、私の頭は真っ白になってしまった。すべての思考が停止し、波の音さえ聞こえなくなる。

静寂の中で、私は彼の唇の感触にとろけていった。


▶NEXT:5月11日 土曜更新予定
まさかの勇......


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