羽田空港STORY Vol.2

ライバルは、職場の美女やCAたち。「市場価値最高の男」に恋した27歳グラホの、3ヶ月の戦い

利用旅客数世界屈指の大空港・羽田。

そこには、行き交う人の数だけ、ドラマがある。

日常と非日常。出会いと別れ。

胸を締め付けるほどの期待と、心がちぎれるほどの後悔と。

想いは交差し、今日もここで「誰かの人生」の風向きが、ほんの少しだけ変わるのだ。

これは、羽田空港を舞台に繰り広げられる、様々な男女のオムニバスストーリー。

仕事一筋で生きてきた、グランドスタッフの山田芽衣。彼女が惹かれたのは、競争率数百倍のパイロット訓練生・神崎賢人だった。

過去の恋愛の苦い記憶から、恋心を封じようとする芽衣だが、果たして…?


「うううっ…うわあああん、うわああん、どうして!? 3年も付き合ったのに、何でよ」

13:00、ランチタイムで大盛況の空港スタッフ食堂に、似つかわしくない悲壮な泣き声が響き渡る。

早番シフトのランチ休憩に入り、同期を探しながら食堂に来た私は、その声に思わず立ち止まった。

見ればテーブルに突っ伏して身を振り絞るように泣いているのは、3つ上の由佳先輩。ほかの先輩たちが、白雪姫の7人のこびとよろしく彼女をぐるりと囲んで、精一杯周囲の視線からかばっている。

「ゆ、由佳さん、どうしたの?」

すでに座って食事中の同期・ゆかりの横に滑り込んで、恐る恐る尋ねると、ゆかりは目を潤ませ鼻をならした。

「3年付き合った、あの彼氏に、振られたって…」

「ええっ!?訓練終わったら入籍するって言ってたよね?」

思わず大声を出してしまって、ゆかりに「しーっ、しーっ」とたしなめられる。隣のテーブルのパイロットたちが、ちらりとこちらを見た。

由佳先輩の彼氏は、3年前に地上研修に来たパイロット訓練生だった。OJTの教官と生徒として出会い、付き合い始めてからも二人の仲の良さは有名だったのだ。

「この3年間、LAX(ロサンジェルス空港のこと。パイロット訓練所に近い)に3か月に1回くらい会いに行って、貯金もすっからかんって笑ってたのに。チェックアウトしたら1か月で、CAにとられたって…」

いつもなら、ゆかりと同じように、大好きな先輩の失恋に胸を痛めるけれど。

今回の話は、まるで神様からの冷たい警告のように感じられて、私は何も言葉を発することができなかった。

パイロット訓練生・神崎賢人に、教官として出会って3か月。まもなく彼も地上研修を終え、数年にわたる訓練に入る。

私はもっとも恐れていた事態に陥っていた。

この記事へのコメント

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No Name
芽衣の恋、応援したい。
2019/04/28 05:2599+返信5件
No Name
お見送り間に合いますように!
2019/04/28 05:1999+返信3件
No Name
がんばって!
2019/04/28 05:1899+
もっと見る ( 113 件 )

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