欠点のない、完璧な男などこの世にはいない。
人には誰でも長所と短所があるものだ。
しかし、女性が絶対に許せない短所を持った男たちがいる。
浮気性、モラハラ、ギャンブル、借金、ストーカー…
そんな残念男ばかり引き寄せる女が、もしかしたらあなたの周りにもいないだろうか。
橘梨子(たちばなりこ)、32歳もその一人。人は彼女を「男運ナシ子」と呼ぶ。
この話は、梨子がある出来事をきっかけに、最後の婚活に挑む物語。
彼女は最後に幸せを掴むことが出来るのか、それとも…
「橘梨子さん。来週の全社員向けのキックオフで、君をMVPに表彰することが決まったよ」
社長から直々にそう言われたとき、梨子は心底嬉しかった。
ーこれも、恋愛を封印して、仕事一筋で頑張ってきたおかげかもしれないわ…。
梨子が勤める恵比寿の化粧品会社は、15年前に設立され、数年前まで知名度はあまり高くはなかった。
そんな中、梨子が新商品開発チームのリーダーに抜擢された。新しい化粧品を作ることが夢でこの業界に入り、諦めずに上司に企画書を出し続けた努力が、ついに認められたのだろう。
そして何度もコンセプトを練り直し、オーガニックコスメでありながらもメイク崩れしない、という商品にたどり着いたのだ。
"オーガニックなのに崩れない"というコピーと共にCMが流れるようになると、商品は生産が追い付かなくなるほどで、大ヒットオーガニックコスメとして多くの雑誌にも取り上げられた。
「今年度のMVPは、"オーガニックなのに崩れない"パーフェクトオーガニックのプロデューサー、橘梨子さんです」
いざ壇上に立つと、緊張で手が震えてくる。ウェスティンホテルの重厚感のあるギャラクシールームで、全社員の羨望の目が梨子に注がれていた。
ルブタンの勝負靴に、オフホワイトのパンツスーツ。自身の立ち上げたコスメで完璧にメイクも決めた梨子は、誰の目から見ても美しい。
32歳、キャリアも積み、プレスの取材もプレゼンの場数もこなしてきた。でもそんな梨子にとっても、会社の中でMVPを受賞するのは初めての経験なのである。
最前列では、ずっと応援してくれていた同期の竜也と陽菜が目配せをしてくれる。
その後ろで、後輩や同僚たちがうっとりとした目で梨子を見つめながら、ヒソヒソと囁きあっていた。
「梨子さん、あれだけ美人なのに仕事もできるなんて、ホント完璧だよね…」
「全てを手に入れた女、って感じよね」
美貌も仕事も、何もかも手に入れた女ー。梨子は常に人からそう呼ばれ、一見パーフェクトな人生を歩んでいるように見える。
だけど彼女には、たった一つだけ欠けているものがあるのだ。
この記事へのコメント
代々木上原女子受けするキーワードですね😜