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  • 東京23区男子 Vol.14

    好きになったのは、まさかの男…。1時間かけて都内に通う男が見せてくれた、泣けるほど素敵なもの

    お互いの住んでいるエリアの話になり、私は何気なく彼に聞いてみた。

    「ミツルさんは何区に住んでるんですか?」
    「僕は海が好きで・・・実は、鎌倉在住なんです」
    「え?か、鎌倉ですか!?」

    “そう来たか!”と思わず叫びそうになる。私はこれまで、23区に住む数々の男性に会ってきた。しかし鎌倉とは、想定外だ。

    「会社、青山の辺りですよね?遠くないんですか?通勤とか大変そう・・・」

    「それがね、湘南新宿ラインか横須賀線を使えば意外に近いし、一度向こうの方に住むともう離れられないんだよね〜。今度、遊びにおいでよ。案内するから」

    「本当ですか!?行きたい!」

    ミツルの話は興味深く、私たちの会話はポンポンと弾み、遊びに行く約束までしてしまった。

    そんな私達を微笑ましく見ていた希恵さんだが、“ごめん、私この後ちょっとお台場に行かなきゃいけなくなったから、二人で楽しんでね”と言って店を出てしまった。

    そして、すぐにタクシーに乗り込んで帰ってしまったのだ。


    ーだがこの後、希恵が恐ろしいことに巻き込まれるなんて、この時は誰も分からなかったのだ・・・。希恵の恐怖の体験は、4P目で要チェック!ー



    —週末、鎌倉にて—

    鎌倉駅を降りると、心なしか海の匂いが鼻をかすめる。鎌倉は静かな冬が終わり、騒がしくなる夏に向けて賑わい始めていた。

    「里香ちゃん、こっちこっち!」

    改札を出ると、ミツルが車で迎えに来てくれていた。

    シンプルな白のTシャツに、くるぶし丈のパンツにローファー。ギラギラ感は皆無で、むしろ爽やかなミツルが眩しくて私は目を細める。

    「今日さ、何時まで大丈夫?」

    東京へ帰る最終電車は23時39分だ。 その時刻を伝えるとミツルはニコッと微笑んだ。

    「OK。じゃあ今日は、僕が里香ちゃんの1日をいただきます。絶対楽しませるし、鎌倉を好きになって帰ってもらうから、覚悟しておいてね!」

    そしてその宣言通り、私はこの1日のデートですっかりこの街に魅了されてしまった。鎌倉だけではない。この場所に住む、ミツルという男にもだ。

    「ランチの場所、迷ったんだけどあえてクラシックな所で勝負しようかなと思って。後で海沿いをドライブするから、最初は山側からね。みんな海を目指して鎌倉へ来るけど、実は山側もいいんだよ〜」

    そう言って笑うミツルが連れて行ってくれたのは、高級別荘地である鎌倉山の中にある『ローストビーフの店 鎌倉山本店』だった。

    口の中に入れた瞬間、上品な旨味が溢れだす。柔らかくてジューシーなローストビーフに私は思わず感嘆の声をあげる。

    「お、美味しい・・」

    そんなローストビーフの余韻に浸りながらミツルに尋ねる。

    「ところで、どうして鎌倉にお住まいなんですか?」

    何も飾らず、自然体。髪もキチッとセットしているわけでもなく、かなりラフだけど会話の端々にセンスの良さが垣間見られて、お洒落だ。それでいて、どこか掴みどころがなくてちょっと危険な雰囲気もある。

    そのバランス感覚がとても良くて、私は妙にドキドキしてしまう。

    きっと彼なら都内でも良い所に住めるし、馴染むはずなのに。

    「なんだろうね。一言で言うと、自分の居場所を見つけに来たのかな」

    この時の私は、まだこの言葉の意味を分かっていなかった。しかし、最後にはこの意味を理解することになるのだ。

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