結婚に向かない男 Vol.7

プロポーズ翌日に前言撤回!?「結婚してほしい」と言ったはずの彼が、突如豹変した理由とは

軽井沢でロマンティックな夜を過ごした翌日。

秀樹の車で家まで送り届けてもらった後も、詩織はプロポーズの余韻に浸っていた。スマホ片手に、婚約指輪とドレスの検索が止まらない。

「秀樹自身はメガバンク勤務のサラリーマンですけど、実家が割と裕福なんです。お父様が確か著名な大学教授とかで…お母様もとっても上品で素敵な方。別に玉の輿を狙ったわけじゃないですけど、そういういいお家に嫁げることは素直に幸せだなって」

地元・秋田から上京し、百貨店でBAをしながら必死で生計を立てていた詩織。

秀樹と知り合ったのは友人の紹介だった。Facebookで詩織を見つけた彼が、友人に「ぜひ紹介してほしい」と頼んだらしいのだ。

それから2年の年月を重ね、ついにここまでたどり着いた−。

しかし夢見心地のままベッドに横たわろうとしたその時。秀樹から不穏な着信があった。

“前言撤回”の許しがたい理由


「詩織、ごめん。それで…その、プロポーズの話はなかったことにしてほしいんだ」

歯切の悪いそのセリフを、詩織はしばし理解できなかった。

「なかったことにしてほしいって...意味わかんないですよね。結婚したいって言ったのは秀樹なのに。彼は言いづらそうにずっとモゴモゴ言い訳していましたけど、私も引くわけにはいかない。何度も理由を問い詰めました」

するとついに観念した彼はこう言った。母親と姉に猛反対された、と。

「彼は結局最後まではっきりとは言わなかったけど、つまりこういうことです。秋田出身の、どこの馬の骨ともわからぬ女は信用できない。一流大学を出て、大企業に勤めている女性じゃないと結婚相手としては認められないって」

詩織はそう一気に語り終えると、苦々しい表情で俯いた。

「俺は本当に詩織のことが好きなんだ」
「これからもずっと一緒にいたいと思ってる」

「結婚はできない」と言いながらも、秀樹はそんなセリフを並べ詩織を繋ぎとめようとしたらしい。

「プロポーズを受けるくらいだから、もちろん私だって秀樹を愛してる。もう一度考え直してくれないかな…とか、ご両親に会って話す機会だけでも作ってもらえないかな…とか、考えなかったわけじゃないんです。でも…なんか急激に冷めちゃったんですよね」

静かにカフェラテを啜る。そして詩織は長く美しい睫毛を伏せたまま言葉を続けた。

「だって、秀樹ってもう33歳ですよ?いい大人が、自分で決めた結婚相手を親に反対されるって…その関係性がもう情けないっていうか。だって、親に信用されてないってことでしょう。さらには反対されて説得もできないなんて、彼の能力も疑っちゃう」

嘲笑うように言った詩織の表情は固い。しかし顔を上げたその目には力があり、はっきりとした意志が感じられた。

「少なくとも私は10代から自立して、自分の力で生活してます。いつか自分でエステサロンを経営したいっていう夢もあって、そのために努力もしている。恥ずかしい生き方をしてきた覚えなんてない。それなのに…親に自分の彼女を否定されても反論すらしない人なんて、こちらから願い下げだわ」

【結婚に向かない男】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo