SPECIAL TALK Vol.53

~「自分の目で確かめたい」。だから周りを気にせず駆け抜けられた~

2020年のニューリーダーたちに告ぐ

アメリカ連邦政府の予算委員会に公務員として勤めた、唯一の日本人。それが中林美恵子氏だ。

冷戦構造に興味を持ち、安全保障を学ぶためにアメリカに渡った中林氏は、大学院を卒業後も、アメリカの政策決定の現場を自分の目で見るために公務員になるという道を選んだ。

9.11テロを機に、大きく変化したアメリカ社会を目の当たりにして帰国するが、その後もさまざまな立場で、安全保障や政治にかかわり続けている。「典型的な田舎者だった」と語る中林氏がなぜグローバルに活躍するに至ったのか。

それを探ることで、先行き不透明な世界を生き抜くニューリーダーたちの指針が見つかるだろう。

中林美恵子氏
埼玉県深谷市生まれ。早稲田大学教授。大阪大学博士(国際公共政策)。ワシントン州立大学大学院政治学部修士課程修了、修士(政治学)。米国在住14年間のうち、1992年に永住権を得てアメリカ連邦議会・上院予算委員会補佐官(米連邦公務員)として正規採用され、約10年にわたり米国家予算編成を担う。2002年に帰国し、独立行政法人経済産業研究所研究員、米ジョンズ・ホプキンス大学客員スカラー、跡見学園女子大学准教授、財務省財政制度等審議会委員などの公職および衆議院議員(2009~2012年)を経て、2013年より早稲田大学准教授、2017年より教授。


金丸:本日は早稲田大学 社会科学総合学術院教授の中林美恵子さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。

中林:こちらこそお招きいただきありがとうございます。

金丸:本日は舞台として西麻布の『常(とわ)』をご用意しました。数々の名店で修業されてきたご主人による独創的な和牛料理は、非常に革新的で評価されていると聞いています。

中林:ありがとうございます。料理もとても楽しみです。

金丸:さて、中林さんは、日本人でありながらアメリカの連邦議会で働いていたという異色の経歴をお持ちです。日本人で正規採用された公務員は、現在に至るまで中林さんただひとり。実は中林さんとは、スタンフォード大学の故青木昌彦教授の勉強会でご一緒させていただき、かれこれ20年ほどのお付き合いになります。

中林:2002年、私が日本に帰国したあとにお会いしましたね。

金丸:その間、私はずっと経営者をやっていますが、中林さんは帰国後、経済産業研究所に勤めたり、政治家になったり、さまざまな場でご活躍されて、現在は早稲田大学の教授でいらっしゃる。

中林:アメリカで働いていたときは、アメリカのためにアメリカの公務員として仕事をして、民主主義とはどういうものなのかを深く考えさせられました。日本でもいろいろな経験を、しかも楽しみながらやらせていただいているので、本当にありがたい限りです。

金丸:アメリカの政治を中から見てきた貴重な経験から、トランプ大統領の特集番組などでも、中林さんのお姿をよく拝見します。今日は中林さんの生い立ちから、なぜアメリカで働くことになったのか、そして、今後の世界情勢に至るまで、いろいろと伺いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

埼玉に生まれ、スポーツ少女として育つ

金丸:早速ですが、お生まれはどちらでしょう?

中林:埼玉県深谷市の戸森というところです。すぐ近所に渋沢栄一さんの生家と記念館があります。

金丸:深谷といえばネギが名物ですね。

中林:おいしいですよ。利根川の氾濫によって土が肥えている場所ですから。家の周りは農家ばかりで、私も立派な田舎者でした(笑)。

金丸:小学校は公立ですか?

中林:ええ。小中高とずっと地元の公立校でした。

金丸:中林さんは身長が高いですよね。

中林:172センチあります。

金丸:子どもの頃から背が高かったんですか?

中林:小学校の頃はおチビちゃんでした。でも、中学3年生のときにものすごく身長が伸びて。部活でバレー部に所属して、存分に打ち込みました。

金丸:ではバレーで活躍を?

中林:サーブが得意なアタッカーになりました。おかげで県立の女子校から、「授業料は要らないからウチに来てくれ」とスカウトが来ましたよ。

金丸:素晴らしい。ずっとバレー一筋だったのですね。ご両親は「勉強しなさい」とはおっしゃらなかった?

中林:親も私を見て、勉強よりスポーツが得意なんだから、やらせておこうという感じでしたね。あまり常識にこだわらない親だったので「女の子なんだから」と言われることもありませんでした。

金丸:ご両親にも応援されながら、すくすくと育たれたんですね。スポーツのほかに何か好きだったことはありますか?

中林:作文が得意でした。小学校のときは、ほかの生徒のために弁論大会用の文章を書いたり、生徒会長立候補者の演説原稿を書いたり。

金丸:スピーチライターですね。

中林:私はもともと自分が前に出るよりも、裏方のほうが好きなんです。

金丸:中林さんは、ルックスも決して地味ではない。だから前面に出たいタイプなのかと思っていました(笑)。

中林:とんでもないですよ。ですから、アメリカ予算委員会での仕事は本当にやりがいがあって大好きでした。

金丸:ポジションとしてはリーダーではなく、スーパーサブがいいということですね。

中林:政治だったら総理大臣よりも官房長官がいいですね(笑)。表に出るより、裏で動き回ったほうが絶対に面白い。

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