最後の恋 Vol.4

「普通レベル」のくせに…。あの子が、美女を渡り歩いたモテ男から“最後の女”に選ばれたワケ

人はいつだって、恋できる。

だが振り返ったときにふと思うのだ。

あのときの身を焦がすような激しい感情を味わうことは、もうないのかもしれない。あれが「最後の恋」だったのかもしれない、と。

それは人生最高の恋だったかもしれないし、思い出したくもない最低な恋だったかもしれない。

あなたは「最後の恋」を、すでに経験しているだろうか…?

この連載では、東京に住む男女の「最後の恋」を、東京カレンダーで小説を描くライター陣が1話読み切りでお送りする―。

前週は、恋愛体質の女・ミホの話を紹介した。

今回は、ミホとは結ばれなかった一樹が、最後に選んだ女・茜の物語。


選ばれた女、選ばれなかった女


「ミホ先輩、二次会いらっしゃいますか?夫も、ぜひ来てほしいって…」

式場でゲストを見送りながら、私はあの女に尋ねた。夫、という部分をほんの少しだけ強調して。

あの女ーミホさんは、私の職場の元先輩。そして私の夫・一樹と"何かしらあった"であろう人だ。

「明日から出張なの、今日は遠慮させてもらうね」
「残念です」

去っていくミホさんのほっそりした後ろ姿を見送る。なんてキレイな形の脚。

ミホさんは美しいひとだ。花に例えるなら月下美人。月明かりを浴びて一夜だけ咲く花のような、危うい美しさがある。

私はたぶん、ガーベラあたりかな。そこそこ美しく、お手入れが簡単で長持ちして、手に入りやすい花。

だけど…。

モテ男、蓮見一樹が最後に選んだのは、ガーベラでしたとさ。



「うらやましー!どうしたら茜さんみたいに"最後の女"になれるんですか?」

職場近くの『bills 銀座』。眺めのいい広々としたフロアに、"絶賛婚活中"だという28歳の後輩・沙希の声が響き渡る。

入社直後から「蓮見先輩が好き」と周囲に公言していた私は、8年越しの恋を叶えた女としてレジェンド扱いされているらしい。

「お互いのタイミングが合っただけよ」

私は笑顔を浮かべて、はぐらかす。

タイミングって、なんて便利な言葉。もちろん重要な要素だが、それだけでもだめなのだ。

「沙希ちゃんは最近どうなの?」

沙希はスマホでLINE画面をスクロールしながら、男たちの名前を一人ずつ確認するようにして、話している。

「前に相談した商社マンの高田さんとは、相変わらずご飯とか行ってますよ。あ、そういえば安岡くんは切りました!ちょっと迷ったけどナシかなって。

そうそう。最近、年下いいかもって思い始めてて。茜さんどう思います?半年くらいしつこく誘われてるスタートアップ系の男子がいるんですけど…」

うんうん、へえ、と笑顔で相槌を打ちながら思った。

あなたには、無理。

高田さんだろうがスタートアップ男子だろうが、彼らの"最後の女"にはなれません。

私は、しゃべり続ける沙希の話を聞くふりをしながら、思い出していた。好きな人の"最後の女"になる唯一の方法を教えてくれた、ある人のことをー。

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