恋愛感情は3年で消える。
まことしやかに囁かれるこの言葉を体現するように、3年目の危機を迎えている二人がいた。
3年目の危機を乗り越えるか、それとも終わりを迎えてしまうのか…?
岐路に立つ二人の行く末は…?
深いこげ茶のエスプレッソに、真っ白なミルクフォームがたっぷりと注がれていく。
ふんわりとカップに積もるミルクの泡は、亜梨沙に故郷の雪景色を彷彿とさせた。
―金沢は、もうすぐ雪の季節だな…。
ボンヤリとカプチーノを見つめながら郷愁に浸る亜梨沙の視界に、ふいにヒラヒラと揺れる手のひらが割り込んで来た。
「亜梨沙さん!ボーッとしちゃってどうしたんですか?役員会、もうすぐ始まっちゃいますよ!」
「あ…ゴメン」
はつらつと声をかけて来たのは、秘書室の後輩・ユカだ。
元営業らしい明るいキャラクターは、女だらけの大手化粧品会社の秘書室に活気をもたらしてくれている。
毎週月曜の朝は、そんなユカと雑談をしながら役員会の準備をするのが亜梨沙のルーティンとなっていた。
「もう、来週クリスマスだからって浮かれちゃってぇ。亜梨沙先輩はいいなぁ、ラブラブな彼氏がいるんだもん。もう付き合って3年でしたっけ?」
「うん、それくらいになるかな」
「いつも彼氏からクリスマスにもらったネックレスつけてるし、仲が良くて羨ましい!そろそろプロポーズされちゃったりして?あーあ、私も早く相手見つけたいです〜」
―プロポーズ、ね…。どれだけ待っても、無駄かもしれない…。
ユカの言葉に空笑いしながら、亜梨沙は昨晩の悠人の、あまりに冷たい態度を思い起こしていた。
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