美しいひと Vol.9

どうしてあんな普通の女が…?誰もが惚れるモテ男を射止めた“中の上の女”の正体とは

恵美と別れ帰路につきながら、私は一人ぼんやりと考えた。

恵美からは「思いを伝えろ」と、まるで自分のことのように熱く語られたものの、しかし何度考えても、そんな自爆テロのような真似をする気には到底なれない。

そんなことをしたら、まず間違いなくフラれる。

平塚くんにはっきりフラれてしまったら…私はもう、何を目標に生きればいいのかわからなくなってしまうだろう。

私は学生時代から、彼に認められたくて愛されたくて、それだけを目標にして綺麗になる努力を重ねてきたのだ。

その気持ちは、俊介という存在ができた後でさえ変わっていなかった。

俊介と多くの時間を共有することで、私の中で彼の存在は確かに大きなものとなっていた。

しかしながら俊介と向き合う私とはまた別の自分が、永遠に「平塚くんに愛されたい」と叫び続けているのだ。


岸さゆりの噂


それからしばらく経ち、同僚の花音が銀座ブティックを離れる目前の、ある日のことだ。

私の心で燻る平塚くんへの想いを、再び焚き付けるような出来事が起きた。

休憩時間にバックルームへ戻ると、花音を中心にして同僚たちが何やら盛り上がっている。

そのまま通り過ぎようとしたが、ふと「さゆりさん」という名が耳に入ってきたため、私は足を止めざるを得なかった。

「実は昨日、さゆりさんが食事に連れて行ってくれたの。広報部の仕事について色々教えてくれたんだけど…さゆりさんって、本当に素敵な人なの!周りへの気遣いとか立ち居振る舞いにも品があって…」

“岸さゆり”に憧れているらしい花音が、少々大げさなまでに褒めちぎっている。

写真をちらりと覗かせてもらった私には、岸さゆりなんて容姿も十人並みで、そんな素敵な女性にはまったく見えなかったが。

私はひとり頭を振り、今度こそ皆の輪から離れようとした。

しかしその瞬間、再び花音が口を開いた。

「まさに人生のお手本にしたい女性って感じなのよ。これは噂話だけど…」

そして彼女はほんの少しだけ声を潜めると、続けて、どうしても聞き流せない“噂話”を披露したのだ。

「さゆりさんの実家って、どこだったかな?確か東北で代々続く名家なんだけど…ほら、中條って有名な政治家一族がいるでしょ。その息子と、水面下で縁談が進んでるらしいの」


▶NEXT:11月15日 木曜更新予定
“岸さゆり”には、平塚くんとは別のフィアンセがいた!それを知った麗華は、一か八かの賭けに出る。



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