2018.10.20
SPECIAL TALK Vol.492020年のニューリーダーたちに告ぐ
山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所は、バイオテクノロジーの分野で世界トップクラスの研究所であり、「血液検査によるうつ病診断」や「人工のクモの糸を使った新素材の開発」など、独創的なベンチャー企業を生み出している。
設立から18年間研究所を率いてきたのは、所長の冨田 勝氏だ。人工知能の研究者としてキャリアをスタートさせたが、生物学の面白さに目覚め、大学教員を務めるかたわら36歳にして医学部に大学院入学するなど異色の経歴を持つ。
冨田氏の半生を振り返りながら、変化の大きな時代でニューリーダーたちがどう生きるべきかを学ぶ。
金丸:本日は慶應義塾大学先端生命科学研究所所長の冨田 勝さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
冨田:こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。
金丸:今日は対談場所として、品川区五反田の『ヌキテパ』をご用意しました。フランスの複数の三ツ星レストランで修業されたシェフは、スポーツ界から料理の道へ入ったというユニークな経歴をお持ちです。旬の素材の魅力を引き出した、伝統的であり独創的でもあるフランス料理をご堪能いただきながら、お話を伺えたらと思います。
冨田:料理もとても楽しみです。
金丸:早速ですが、冨田さんのお父様は大河ドラマや手塚治虫のアニメをはじめ、多くの曲を残された作曲家・冨田 勲さんでいらっしゃいますね。
冨田:はい。ただ、もともと冨田家は医者の家系で、今も愛知県の岡崎市に病院があります。長男だった父は医者を継がずに東京に出て、音楽の道に進んでしまったので。「長男の長男である勝君は医者を目指さないのか」、と親戚に言われました。
金丸:白羽の矢が立った?
冨田:ええ。中学生のときでした。私は幼稚舎から慶應義塾だったのですが、医学部に進学するためにはかなりの優等生で成績優秀でなければならない。勉強が嫌いだった私はそんなの嫌だと思って、好きなコンピュータの道に。
金丸:家柄は全然違いますが、勉強嫌いなところは同じですね(笑)。
「我慢して勉強」していたら、研究者の道は閉ざされていた
金丸:お父様は進路について、何かおっしゃいましたか?
冨田:父は自分がわが道を進んだので、私の進路に一切口を出しませんでした。
金丸:音楽家になってほしいとも?
冨田:英才教育は受けましたよ。3歳から有名な先生に師事して、バイオリンとピアノを習いました。ただ父が見誤ったのは、私にクラシックを習わせたことです。クラシックって楽譜通りに弾くのが基本で、ここは弱くとか段々速くとか指示が全部書いてある。そこに自分の創造性を出す余地がゼロなんです。それが本当につまらなくて。多少のアドリブありのエレクトーンとかジャズピアノなら好きになっていたかも。
金丸:いつまで続けたのですか?
冨田:小学4年生です。親の期待を感じていたので嫌だと言えなかったんですが、さすがに我慢できなくなり、「やめたい」と。そしたら、すぐにやめさせてくれました。
金丸:お父様もご立派ですね。無理やりやらせることはしなかった。しかし、冨田家はお父様、冨田さんと二代続けてイノベーターを輩出しています。それは冨田家のDNAなのでしょうか?
冨田:私の場合、慶應という環境が合っていたんだと思います。高校生の多くが大学受験に膨大なエネルギーと時間を注ぎますが、慶應はエスカレーター式なので受験勉強をする必要がありません。それに受験のためには、5教科7科目全部で点を稼がなければならない。それこそ「苦手科目を優先して、我慢して勉強しろ」なんて言われていたら、相当疲弊したと思うし、勉強が嫌になって研究者になろうとは思っていなかったでしょう。
金丸:「得意科目は十分に点数が取れるから、もう勉強しなくていい」というのは、大学受験でよくある指導ですが、それだと子どもの知的好奇心を完全に削いでしまいます。もったいないですよね。ところで、勉強以外で、スポーツはいかがでしたか?
冨田:中学1年生のときに馬術を始めて、高校時代は国体に2回出場しました。関東大会では個人総合で準優勝したんですよ。
金丸:趣味も多彩ですね。馬術を始めたのは、何がきっかけで?
冨田:「ほかの人がやらないから」というのが入り口だったと思います。
金丸:みんながやらないことが、昔から好きだったんですね。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
おすすめ記事
2018.09.21
SPECIAL TALK Vol.48
~VRによる体験がガラパゴス化した医療を変えていく~
2016.10.17
彼が言うなら間違いない!松岡修造が伝授する“デキる人”になるための10ケ条
2015.08.14
予約をとるならいま! カニの名店『きた福』が銀座に進出
2023.08.16
ハラスメント探偵~通報編~
会社の休憩室で、ある食べ物を食べていた29歳男性。突然、女性社員に叫ばれ、戦慄の事態に!
2016.05.19
この手があった!1か月超ステイなら高級サービスアパートメントという選択肢
2016.03.12
貴方がAirbnbの社長だったら?大前研一の授業が追体験できる人気本がきた!
2024.03.28
プロ★幹事
男女の出会いにおすすめの店4選!数多くの食事会を手がけてきた、女性幹事コンビが提案
2015.12.18
接待慣れした美食家はここでもてなせ!サプライズで喜ばせる名店6選
2023.06.07
ハラスメント探偵~解決編~
「休日に上司からのLINEを無視したら評価を下げられた!」これってパワハラ?:ハラスメント探偵【解決編】
2016.02.01
中国ビジネス関係者必携!日本で唯一の中国歳事が全網羅のカレンダー登場
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"