“彼好み”に合わせてた女が、恋の断捨離を決意した瞬間。男の言った、聞き捨てならない一言とは
「そんな彼、切り捨てよ」
「ごめんね絢香。っていうか…ありがとう、付き合ってくれて」
丸の内のビストロ&バーで、芽衣は大きなため息とともに言葉を吐き出した。
「いいのよ。今夜は珍しく夫がみいちゃん見てくれてるし」
そう言って肩を抱いてくれるのは、心の友・絢香。芽衣の緊急事態を放ってはおけないと、駆けつけてくれたのだ。
…昨夜、長谷川の家で発見してしまった、見知らぬピアス。
ソファの隙間に落ちていたとはいえ、決してわざわざ探して見つけたわけじゃない。そんなに長らく放置されていたものだとは考えにくかった。
長谷川は、私以外の女も家に上げている。
信じたくはないが、その推察は限りなく真実に近いだろう。
「私、彼好みになろうって健気に努力してたのよ?ファッションだって合わせて、昨夜も彼がお腹空いてるかもしれないからって、わざわざスーパー寄って坦々春雨の材料買って行ったりしてさぁ…」
赤ワイン片手に、心のモヤを吐き出し始めたら止まらない。
絢香はそんな芽衣の泣き言を「うんうん」と根気強く聞いてくれた。
しかし一通りの愚痴が終わると突如として真面目な顔になり、張りのある声で「あのね、芽衣」と切り出した。
「悪いこと言わない。そんな彼、さっさと切り捨てなさい」