美しいひと Vol.3

「あの子より、君のほうが綺麗だよ」ハイスペ男の甘い囁きが呼び起こした、私の中の“黒い感情”

美人は不美人より、生涯で3億円の得をする。

まことしやかに囁かれる都市伝説だが、あながち嘘とは言い切れない。美味しい食事や高価なプレゼントに恵まれる機会も、美人の方がやはり多いに違いない。

美咲麗華は、麗しくも華やかでもない自身の容姿にコンプレックスを抱いて生きてきた。しかし、大学時代に学年一のモテ男・平塚勇太に恋をし、あっさり失恋したことで、ある決意を抱く。

−“美しさ”を金で買い、人生を変えてやる−

社会人になった麗華は整形に手を出し、“美人”の仲間入りを果たす。すると早速、麗華に会いたいというハイスペ男が現れた


「こっちの甘い顔立ちの彼が、私のお気に入りの俊介くん。で、こっちの…どちらかというと男っぽい感じのが、麗華に紹介する猪瀬(いのせ)さんだからね。

二人とも2歳年上で、同じ外資系投資銀行勤め。…覚えた?」

金曜、19時。麻布十番へと向かうタクシーの中。

自身のスマホで写真を見せながら、花音は私に一生懸命、事前情報を伝えてくれる。

「うん、覚えた。大丈夫」

花音に頷いてみせたあと、私は緊張する心を落ち着けるように小さく息を吐いた。

私が、いわゆる“お食事会”というものに参加するのはこれが初めてのこと。

どういうものだか勝手がさっぱりわからないが、花音曰く「別に、何もしなくていい」らしい。

男性陣が予約してくれた店は、もちろん行ったことのない、そして自分では到底行けそうもない高級割烹だったが、何もせずただにこやかに笑っているだけでご馳走してもらえるだなんて。

花音のような美しい女たちは、これまでの人生もずっとこんな風に優遇されてきたのか。

そう思ったら、自身も“優遇される側”に入れたことへの喜びとともに、過去の自分がひどく可哀想に思え、私ははしゃぐ花音の隣でこっそり胸を痛めたのだった。

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