30歳、わたしの改造計画：キャリア美女の恋は、呆気なく散る…？2歳年下の“愛され系OL”に嫉妬する理由

もちろん、今日も予定はない。横にいたしおりが小声で「先輩、チャンス！」と腕をつついてきた。

しかし美琴がイエスと答えようとしたその瞬間、「すみません、お待たせしました！」と葵が駆けて来た。久しぶりのときめきが、一気に萎んでいく。

「今日さ、美琴も一緒にどうかと思って。」
「わ♡ほんとですか！ぜひ！」

葵は、可愛らしい笑顔を浮かべてこちらを見ている。美琴は二人を直視することができなかった。

「ごめん。今日は先約があって！また。」

美琴はそう言って、「え？え？」と驚くしおりの腕を引っ張り、急ぎ足でその場から逃げ出した。

見た目だけじゃない、美琴の抱えるコンプレックスとは？

「ちょっと先輩、昨日は何で飲みに行かなかったんですか！予定ないって言ってましたよね？」

翌朝、しおりは美琴の昨夜の対応を咎めながら、信じられないと顔をしかめる。

「先輩は、もっと自信を持ってください！最近何でそんな弱気なんですか！せっかく旬さんと一緒に飲めるチャンスだったのに、勿体無いです。あの二人が付き合ってるっていうのもただの噂なんですから、もっと攻めなきゃダメです！攻めなきゃ！」

「自信って言われてもね…。ていうか、しおり。あんたまた痩せた？」

興奮し立ち上がったしおりを落ち着かせたく、美琴は話題を変えようとした。結婚式に向けてダイエットに精を出していた彼女が、数日前よりもスリムになっているように感じたのは事実だ。

息を荒げていたしおりの表情がころっと変わり、「あ！わかります〜？」と目の前でくるりと回った。下半身がより一層引き締まったようで、珍しく細身のパンツを履いている。

「結婚式用のブライダルインナーのことを調べてるうちに、普段の下着も変えてみようかなーって思って！西銀座のワコールショップで教えてもらった『肌リフト』が、すっごくいいんです♡シルエットがきまると、毎日の服選びが楽しくって！」

「今度、先輩も一緒に行きましょう！」とにこやかに誘ってくれるしおりを微笑ましく思いながらも、旬と葵があの後どうなったのか、気になって仕方がなかった。

ーもっと自信を持ってください、か。

パウダールームでリップを塗りながら、美琴はしおりの言葉を思い出していた。

「最近弱気だ」というしおりの指摘通り、自分に自信が持てなくなったのは、指導する後輩が増えたここ1.2年のことだ。

後輩を育てたい一心で、自分なりに真剣に指導しているつもりだったが、最も可愛がっていた後輩から「皆が皆、美琴さんみたいに仕事ができるわけじゃないし、そこまで完璧にできない」と言われているのを、耳にしてしまったのだ。

それを聞いて美琴は、はっとした。たしかに仕事への情熱のあまり、完璧主義になってしまうことが多い。だから後輩への指導でも、長所より短所が目について指摘してしまうのだ。

そんなことを考えていたら、葵がパウダールームに入ってきた。

「あ、お疲れ様です！昨日は急に誘ってすみませんでした。また改めてご一緒させてください。」

彼女をちらりと横目で見るだけでも、細身の白いパンツをとてもきれいに履きこなしているのがわかる。そして葵は天真爛漫な笑顔を向けて、こう話しかけてきた。

「そのワイドパンツ、可愛い！美琴さん似合ってますね！昨日もこういうの履かれてましたけど、お好きなんですか？」

葵を羨ましいと思うのはスタイルが良いだけでなく、美琴と違い、こうしてすぐ人の長所を見つけて素直に口に出せるところだ。

それは仕事上でも発揮されているらしく、営業部では皆に好かれていて評判もいい。こんな子が近くにいたら旬だって好きになってしまうだろう。

「…あ、うん。」

自分の姿を直視されるのに耐えられなくなり、そそくさとパウダールームを後にした。一歩歩くごとに嫌悪と後悔が押し寄せる。

逃げたのは、葵からじゃない。現実を直視するのが、怖かったのだ。

「…私、変わりたい。」

30歳の秋。美琴は自分のために、そう決意した。


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いざ始まる改造計画！美琴は、どう変わっていくのか？

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