―30歳。
この年齢をひとつの節目として、自分を見つめ直す女性は多い。
ちょうど仕事への責任が重くなり、壁にぶち当たる頃。また恋愛でも、経験をそれなりに積んだがゆえに素直になれず苦戦するのだ。
彼女たちは、これをどう乗り越えていくのだろうかー?
美人で頭もよく、仕事もできると評判の美琴(みこと)も30歳を迎えたばかり。
美琴は社内の旬(しゅん)に片思いしているが、告白はおろか、後輩・葵(あおい)との関係の真偽すら確かめる勇気が出ない。
人気者の葵と比較し、逃げ出してしまう自分を変えるため、一念発起し、自分改造計画をスタートさせるのだが…?!
ージム通いも、なかなかハードだわ…。
美琴は自分改造の手始めに、24時間オープンしている近所のジムに入会した。しかし通い始めてまだ1週間だというのに、すでに後悔し始めていた。
出社前にジムで30分のランニングをしているのだが、思った以上にキツいのだ。最近は、しおりにも心配されてしまっている。
「先輩、なんか朝から疲れてません?」
「そ、そんなことないわよ」
そう聞かれると、荒れ気味の肌を直視されたくなくて、思わず目を背けてしまった。
朝の運動は、代謝が上がり精神的にも上向くと聞くが、美琴には逆効果なのかもしれない。
美琴を待ち受けていた、思わぬアクシデント
「なあ、ちょっと相談があるんだけど」
その日の終業間際、まだ朝の疲労を引きずりながらデスクに向かっていると、背後から焦った声で自分を呼ぶ声が聞こえた。
緊迫した声に驚いて振り向くと、そこには旬と葵が立っている。見たくないペアでの登場に、晴れない気分が余計に澱んでしまう。
「美琴に頼みがある。新商品の美容液、キャッチコピーを変更してほしい。」
そう切り出した旬に、周囲は静かにざわつき始め、美琴は思わず「ちょっと待って!」と制す。
「変更って…なんで?…今さら無理なのは、旬ならわかるでしょ?」
「でも、これ見ろよ!」
旬に促され、葵がピンクのケースに入ったスマホを静かに差し出す。美琴の目に飛び込んできたのは、ティーン向けのプチプラコスメのポスターだった。
「ちょっと、これって…!」
笑顔を浮かべるアイドルの横に並ぶ文字列を見て、息を呑む。今冬発売予定で一番力を入れていた新商品のコピーと、酷似していたのだ。