恋と友情のあいだで~廉 Ver.~ Vol.12

夫の浮気を見抜いた妻の執念。ホテルのロビーで4時間待ち続けた女が目にした、怒りの光景

美月:帰国の目的


「じゃあ、また土曜日にね」

浜松町の駅で廉を見送ったあと、私はひとり青山へと向かった。

…週末まで千葉の実家に帰るなどと言ったのは、もちろん嘘だ。

前回の東京出張で、日曜に戻る予定だったはずの廉は、なぜかフライト変更をして月曜に帰って来た。

あの時だって、廉は明らかにおかしかった。

男が急に優しくなった時は怪しい。そんなことは経験上、よく知っている。

しかし廉が私を大切に扱うならば、目を瞑ってもいいと思った。

それなのに−。

今回の東京出張で「私も一緒に帰国する」と告げた時の、廉の顔。あんなにわかりやすく目を泳がせておいて、私が何も気づかないわけがないだろう。

その後、廉が「平日は仕事があるし」とか「平日は夜も接待で埋まってて」などと言い訳を並べ、遠回しに、しかし明らかに私を邪魔者扱いした。そのせいで、直感は確信へと変わったのだ。

−廉は、“あの女”と会うつもりだ。

やたらと「平日」を繰り返してしていたことから考えるに、平日の夜に約束しているに違いない。となれば、どうせなら翌朝ゆっくりできる金曜夜が怪しい。

私はそこまで当てをつけた上で、むせ返るほどの憎悪を押し殺し、廉とともに東京にやってきたのだ。

何のためかって…?

そんなものは、決まっている。あの女…相沢里奈を、排除しなければ。

人の夫に手を出すくらいだから、おそらくあちらも夫婦関係がうまくいっていないのだろうが、そんなの知ったことではない。

自らの意思でセレブ妻の座を選んだのだから、あの女に、今さら青春時代を懐かしむ権利なんかないのだ。

廉は、相沢里奈に騙されている。

あの女は、知的で強い女性を演じている割に、根っこの部分で芯がない。感情のまま男に頼り、さらには金も愛も欲しいと叫ぶ、ただの強欲な淫乱女ではないか。

それが相沢里奈の本性。…あんな女、それ以上でも以下でもないというのに。


無邪気な元カノからの、新情報


「美月さん!お久しぶりです〜!」

青山の『ELLE café』で待ち合わせた女は、まるで旧知の友人かのように気さくな笑顔を私に向けた。

「ご無沙汰しています。結婚式の際は、ご出席くださりありがとうございました」

若干の戸惑いを感じつつも、私は着席しながら、精一杯の親しみを込めて彼女…天野結衣を、真正面に見る。

パフスリーブのトップスに、ゆるく巻いたセミロングのヘアスタイル。その装いを見れば、結衣が若かりし頃、まさに典型的な“愛され女子”だったことを容易に想像させた。

…しかし意外に、鋭い眼光をしている。結婚式の際、薄暗い照明の下で言葉を交わした時には気づかなかったが。

「急なメッセージでびっくりしましたよね?ごめんなさい、私、誰にでもこんな感じですぐに距離縮めちゃうタイプで」

無邪気に笑う結衣に、愛想笑いを返す。しかし彼女が次に続けた言葉を聞いた瞬間、私は思わず息を飲んだ。

「サークルの10周年パーティで廉と久しぶりに会って、美月さんのことを思い出したんです。

それですぐにFacebookで申請を送ったんだけど…美月さん、全然見てないんですね(笑)。なかなか承認されないから、嫌われてるのかと思っちゃった」

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