朝子と亜沙子 Vol.11

男は私を裏切っても、仕事だけは裏切らない。愛人にゴミの様に捨てられた女を救った、たった1つのもの

ここはとある証券会社の本店。

憧れ続けた場所についに異動となった、セールスウーマン・朝子。

そこでは8年前から目標としていた同期の美女・亜沙子が別人のように変わり、女王の座に君臨していた。

数字と恋をかけた2人のアサコの闘いの火蓋が、今切られるー。


念願の本店に異動になった朝子だったが、同期・今井亜沙子は、数字の出来ない先輩に土下座をさせた上に、後輩を追い込んで逃亡させるという傍若無人な女だった。

パワハラで飛ばされた寺島に変わり、新たに着任した課長・島村の協力もあり、朝子は仕事で成果を上げていく。

一方の亜沙子は、不倫関係にあった上司・村上本店長から、彼の出世を機に一方的にフラれてしまうのだった。


朝子:営業一課への熱い想い


―…また来た。

その日、朝子は顧客訪問からの帰りが遅くなり、社員もまばらになったオフィスで、溜まった雑務を片付けていた。

営業一課の島には、島村と朝子だけが残っている。すると、島村の席にまた、二課の課長である佐々木が近づいて来たのだった。

30代半ばにして本店の管理職を務める佐々木は、常に肩で風を切っている。そのスリーピースのスーツからも、意識高い系の男である事は一目瞭然だ。

そして、自分よりも年上の島村に対して、まるで部下に話すかのように、急角度の上から目線で話しかけるのだった。

「島村さん。今月の数字、全然進んでないけどどうなってます?」

島村は、いつも通りに淡々と佐々木に向かって答える。

「まだ、今週はあまり数字が出来ていませんが、月末までにはやりきりますから大丈夫です。」

朝子は、二人のやり取りを静かに遠くから見つめる。すると佐々木は、島村の答えに飛びつくようにして噛み付いた。

「先月は、一件大きな数字が決まって無事だったかも知れないですけど…」

佐々木の口調はまるで、“先月の朝子と島村の大口商いなんてただのマグレだ”とでも言いたげである。

「また前みたいに月末になって出来ませーんなんてみんなに泣きついたら、島村さん、ただのホラ吹きですよ。そのうち誰もあなたの言う事なんか信じなくなりますからね。」

朝子は佐々木の言葉に、グッと怒りがこみ上げる。しかし、今はまだ何も言い返せない。

今月が始まって既に1週間が経ったのだが、一課の数字は本店内で最下位。その理由は、今井亜沙子が不思議なほど数字を出さないからだ。

―一体、今井さん、どういうつもりなのかしら…?まさか、まだ島村課長に反抗しているの?

そして佐々木は、何を言っても一切表情を変えない島村に手応えがないと感じたのか、諦めてその場を去り、次のターゲットを探しに別の課長の元へと向かっていった。

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