ふたりでじっくり語りたいときに選びたいのが、丁度いい和食店。新橋にはそういったお店が多く、価格もおさえ気味なのがうれしい。
たとえば、こちらの『一楽』。カウンターに座れば、ちょっとしたご褒美感もあり、じっくり語りたい夜にぴったりのお店だ。
背伸びせず、けれども非日常。季節を感じさせる魚をおまかせで
『喰切料理 一楽』
「今日はとびきり旨い魚が食べたい」。そんな気分の夜に迷わず目指すべきはこの店だ。
駅前から新橋柳通りを抜けて、新虎通りの手前の区画は、1本中に入ると驚くほど静か。そんなブロックにある『喰切料理 一楽』は、戦後に焼き鳥店として誕生。
先代が、昭和63年から魚料理の店へと発展させ、現在に至る。
店の風情は、歴史の長さを物語るように〝いぶし銀〞という形容が似合うが、一歩中に入れば、飾らないアットホームな雰囲気。
板場の臨場感がたまらないカウンターのほか、テーブル席や座敷もあり、使い勝手も良い。
新橋の中心部からはやや離れているこの場所で暖簾を守り続けているということは、確かな実力があってこそだろう。
現在の店主・山岸俊徳氏が料理長を務めて17年。毎朝築地に通い、旬の魚介類を厳選している。
この日も、イキのいいヤリイカや、刃物のように艶やかに光るイサキなどが店先にひしめく。
男ふたりで差しつ差されつ、なシチュエーションならばやはりカウンターがいい。おまかせコースは3種類。
この時期おすすめだという「鱧しゃぶ」を味わえるコース「雅」は、ムラサキウニとバフンウニの食べ比べなど趣向を凝らした品も登場。
しかも、ひと口大の白飯が添えられ「殻の中でウニと混ぜてお召し上がり下さい」と山岸氏。これは憎い演出。ふたりそろって、思わず顔がほころぶ。
主役の鱧は、淡路育ち。生きた状態では鋭い歯や獰猛な動きに驚かされるが、それもつかの間、たちまち捌かれて鍋の準備が整う。
美しい半透明の身を熱いだしにさっとくぐらせてまずはひと切れ。一見淡泊そうにみえる鱧が、実は豊かな旨みをたたえていることが、よくわかる。
どちらからともなく「旨い」という呟きが。
そして〆は、鍋だしを餡にして揚げたてのおこげにかける、独創的な一品。目の前で仕上げるプレゼンテーションも相まって、満足度は最高潮。
静かに、季節の美味を味わい尽くす。大人の贅沢だ。
Photos/Akihiko Uzawa, Text/Haruka Koishihara
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この記事へのコメント
ちゃんと食べてみてよ。