鮨好き著名人たちの、粋な鮨屋の活用法 Vol.3

アラン・デュカスの職人ふたり鮨

鮨屋における、上等の客とはなんだろう。
そのひとつの答えを教えてくれるのが、現代フランス料理の巨匠。
彼が足繁く通う店で、秘密を聞いてみようか。

curated by
アラン・デュカス

今回の来日では、『ベージュ アラン・デュカス 東京』のフェア「ランデヴー」に参加したモナコ『ルイ・キャーンズ』総料理長、フランク・セルッティさんを伴って来店

誰と来ても、食べる時はプロ対プロの、ふたり鮨

現代フランス料理の最高峰シェフのひとり、アラン・デュカス。年3回来日する彼が、その度必ずといっていいほど、足を運ぶ鮨屋がある。熟成の旨さを世に伝えるご存知、四谷『すし匠』。東京、大阪、金沢など、各地の美味の巡回を怠らぬシェフの、日本における帰港地とも言える店だ。

「ネタ、温度、味つけ。それらの多様性と卓越した調和が、中澤圭二さんの持ち味だと思います」10日寝かせた赤身のづけをさっと口にしつつ、シェフは語る。ネタ毎に味と食感を変える職人としての個性の強さがありながら、全体としては程の良さを守る。その塩梅が、心地良いのだと。

「新しい発見が、来る度にね」ネタ箱にイサキを見つけて、美しいねとつぶやくシェフ。塩だけできっちりと〆めているから、刺身で食べると甘さがよく分かると、中澤さんの解説を聞きながら、「見ただけで食感を想像できる。素晴らしいですよ」手放しの、賛辞だ。

「デュカスさんは、職人が10の力を出す、いや出さねばならぬと思わせる方」とは、中澤さんの言葉。シェフはたとえ連れとの会話に熱中していても、鮨が置かれればさっと口へと運び、いかに旨かったかを言葉で、そして表情で伝えるという。「いい味わいなら、目を見て全身でその感激を伝えて下さる。言葉は、本当はいらないんですね」料理のプロは、食べ手としてのプロでもあったのだ。

「職人をその気にさせる。だからこそ、たくさんの料理人が彼の元に集い、巣立つんでしょうね」「ひとり鮨はひとつの究極」と、中澤さんは言う。鮨を食べることだけに専念するお客と、鮨職人の濃密な関係が生まれるからと。でもデュカスさんは、ふたりで来てもひとり鮨なのかもしれない。いや、プロ対プロの、ふたり鮨、と言えようか。

左.10日寝かせた釣りの中トロは3枚づけに

右.大きい小柱を漬け込んだ煮小柱は香りよし

左.塩と酢できりりと〆めて4日寝かせた小肌

右.熟成に向く鰹のハラスは最後に甘みが香る

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