当代屈指の鮨職人が
試行錯誤の末に辿り着いた
3種のシャリに熟成ネタを合わせる
江戸前鮨の最前線

日本全国20軒近くの店を渡り歩いた中澤圭二氏が、1989年に四谷で始めた『すし匠』。幾多の食通たちを迎えた暖簾をくぐると、凛とした空気が店内を包む。決して堅苦しくはないが、鮨職人の矜持を感じさせる空間。
「最高の鮨を味わってほしい」と語る大将 中澤氏の気迫が、心地いい緊張感を醸成している。

長年の研鑽の末に中澤氏が行き着いたのは、一口サイズの握りとつまみを交互に小気味良く提供するスタイル。
握りの合間に「ハマグリの出汁漬け」といった酒肴が繰り出され、延べ30〜40品目に至る。シャリは赤酢と白酢、さらに2つを混合した3種を用意。ネタによって巧みに使い分け、流れに緩急をつける。

赤シャリには、エビや煮穴子のような味の強いネタ。イカや赤貝など、味の淡白なものには白シャリを用いる。
同じ魚でも浅締めのさっぱりとしたコハダは白、しっかり酢締めしてから寝かせたコハダは赤シャリで握るというこだわり。
熟成した魚とシャリの酸味が口の中で調和し、馥郁とした余韻を残す。

ネタによって仕込みや熟成も様々だが、10日間、真空氷蔵でじっくり寝かせた「エイジングトロ」の握りは、江戸前寿司の進化系とも云える逸品。
「あん肝とスイカの奈良漬け」や、中落ちに沢庵を混ぜて叩いた「おはぎ」など、変わり種も揃う。
カウンター越しの会話を楽しみつつ、至福の時間を過ごしたい。
お伝えいただければ幸いです。