あれから、半年後—。
大きな窓から柔らかな白い光が差し込む中、真子は真っ白なレースがあしらわれたドレスに身を包んでいた。
白を基調としたチャペルからは、真子がInstagramで見て憧れていた、ガラスのように透き通った美しく青いワイキキの海が広がっている。
真子の隣には、父親が緊張した面持ちで隣に立っていた。目に、薄っすらと涙を浮かべている。
「真子。綺麗だよ、良かったな」
ずっと結婚を渋っていた父からの思いがけない言葉に、真子まで目が潤んでしまう。
二人がバージンロードをゆっくりと歩くと、参列者たちは、拍手で出迎えてくれた。
「真子…。本当に綺麗…!」
友人の陽子もこの日のために、遥々駆けつけてくれていた。式には両家の家族と親しい友人たちを招待したが、心から嬉しそうに祝福してくれている。
「You may kiss the bride.(誓いのキスを)」
神父からの言葉に、真子は照れながらもキスをした。目の前にいる彼も、照れ笑いを浮かべている。
「おめでとうー!」
二人に祝福の言葉が贈られる。
美しい景色に大好きな人たちの笑顔。真子は、この日を迎えられたことを心から幸せに思った。そして、何よりも目の前にいる“彼”との結婚が自分の心から望んだことだと、再度確信した。
「さぁ、これからお祝いの食事だ!」
真子の父は、はしゃぎながら皆をレストランへと導いた。元々家族でハワイに行きたがっていたので、昨日から浮かれっぱなしなのだ。
―あの時、選択を間違えないで良かった…
そう思っていると、彼は大きな手を差し出して、「真子、行こう」と微笑んだ。
二人の間で揺れる花嫁
結婚。
それは女性にとって、人生を変える大きな分岐点である。
IT関連企業でコンサルタントを務める真子、29歳。彼女にも、その分岐点がついに訪れた。
「結婚してください」
幸せいっぱいなはずの、その瞬間。
しかし真子の心には、小さなトゲのようにチクリと刺さる、忘れられない過去があった。