花の第1営業部 Vol.9

「会社に左右される人生」はどこまで許せる?突然の打診に心が揺れる、30代サラリーマンの悩み

まるで90年代トレンディドラマの、主人公のような男がいる。

彼の名は、一ノ瀬瑛太。ニックネームは“イチエイ”。

華やかなイメージの広告代理店の中でも、「エリート」とされる、大手自動車メーカーの担当営業だ。

慶應義塾大学卒業。港区の大手広告代理店勤務。“花の第1営業部”所属、35歳、独身。

エリート街道をひた走ってきた瑛太は、このまま順調に出世できるのか…?

これは、東京でしのぎを削る30代サラリーマンの、リアルな心の叫びである。

初めてチームリーダーを任されて臨んだ競合プレゼンは、まさかの結果となった。その後屈辱的に、後輩の部下になりながらも、なんとか再プレゼンが終わった。そんな瑛太に、また新たな試練が…。


「一ノ瀬、ちょっとこっち来れるか?」

航が仕切る、プレゼン結果報告の打ち合わせを終えて会議室から出ると、突然、本部長から声をかけられた。

-こんなタイミングで本部長から?…一体何の用事だ?

不審に思いながらも、もちろん断る訳にはいかない。

「はい、すぐ伺います!」

慌ててデスクに戻ってジャケットを掴み取り、本部長室に向かった。

「一ノ瀬、入ります」

意を決してドアを開けると、またしても思いがけない人物がそこには座っていた。

「あ、遠藤部長。ご無沙汰しています」

「アホか、お前。俺は今“本部長”や。けど、久しぶりやな」

瑛太が、新入社員当時に配属されたテレビ部時代に、隣の部署の部長だった遠藤本部長が部屋にはいたのだ。

-彼は、数年前に異動しているはずだが。

「大変失礼しました!」

慌てる瑛太に、“イチエイ”の本部長が話を切り出した。

「遠藤本部長は、君も良く知ってると思ったんだけどな。今は、関西の第三営業部を担当している。実は彼と私は同期入社でね」

本部長になっても“同期”というのは、やはり特別な存在のようだ。

-でも、そんな遠藤本部長が、なんでこんなところに。

自分が呼ばれた意味がわかっていない瑛太に、本部長は話を続けた。

「一ノ瀬くん。この前の再プレゼン、君も大いに活躍したそうだね」

不敵な笑みを浮かべながら珍しく褒め言葉を口にする本部長に、瑛太は嫌な予感を感じ取っていた。

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