改めて『星のや東京』を徹底取材して分かった!『星のや』はおもてなしの日本代表だった
■客室扉を開けると、そこは日本旅館の顔をした高級リゾート
1フロアに6部屋のみで構成される客室の数は計84。「菊」「百合」「桜」と3つの客室タイプに分かれている。光の入らない廊下はダウンライトを使って、あえて暗めにしている。その理由は部屋の明かりとのコントラストを狙うためだという。
扉を開けると、障子越しに太陽の光が優しく注ぎ込み、暗い廊下とのギャップに魅了される。ここの照明にはすべてストーリーがあるのだ。写真は南向きの角部屋「菊」で広さは83㎡。
部屋に入ると、日本旅館の趣をもちつつラグジュアリーリゾートのヴィラの構成に似ていると気づく。例えば広いウォークインクローゼットを設けているし、ベッドの他にデイベッドをふたつ設置(寝室とレストルーム)。デイベッドは「いつでもどこでも、ごろごろしてほしい!」というリゾート的ホスピタリティだ。
そうやって昼から寛いでいるうちに、ビルを覆う麻の葉の文様が障子に映し出される瞬間がやってくる。突如現われる影絵に驚き、障子を開ければ、畳に文様が映る!そんなからくりも感じられるから、ここでは外出しないで、のんびりしていることが善なのだ。
ベッドにも並々ならぬこだわりがある。まず、日本旅館ということを意識し、高さの低いマットレスを特注。布団のように見せるため、角を丸くオーダーした徹底ぶりだ。
さらに国産オリジナルのスレッドカウント500のシーツを採用。スレッドカウントとは1インチの正方形に入る糸の密度であり、高級ホテルであっても300、一般家庭にいたっては130程度。
極細糸を使用した密度が細かい生地はふんわり柔らかく、特に掛け布団の違いが歴然。ギリギリ触れているくらいの優しいタッチで身体を包み込み、天国級の気持ちよさ!
この醍醐味は、シャワーを浴びて素肌でもぐり込んだ時にもっとも感じられるだろう。一度この布団に入ったら、もう出られなくなってしまうという声も多い。
テーブルは、嵐山の職人による作品。足が竹なのに四角形になっているのは、竹を組み直す特殊な技法を駆使しているため。ここで南部鉄器の急須を使いほうじ茶を淹れれば、お茶のひとときにも風情を感じるはずだ。
日本を代表するキモノデザイナー・斉藤上太郎氏による部屋着。ジャージー素材のため着心地が抜群によく、帯びの紐は巻くだけで立派な帯締めに見える仕様。
この部屋着は、「そのまま外出もでき、外での時間もリラックスして過ごしていただきたい」という意図のもとに作られた。実際に多くのゲストが皇居の散歩などに着用するとか。一階で下足の貸出もあるので全身できまり、記念にたくさん写真を撮ってしまうはずだ。