
隣のスーパーウーマン:謎だらけのゴージャス美女、現る。崩壊寸前オフィスの救世主となるのか?
事件の全貌は、こうだー。
女子社員同士のいざこざにより部内がギスギスしていたのを、見かねた課長が叱咤した。それをパワハラだのなんだの文句をつけ、課長が辞めなければ労働組合に訴えると大騒ぎして、上司をつるし上げる始末。
こうしてさんざん部署をかき回した挙句、3名の女子社員が突然一気に辞めたのだ。
それに伴い必然的に、残された社員の業務が増えた。嫌気がさした社員が辞め、そのしわ寄せが残った社員を蝕み、また社員が辞め…という悪循環。
そしていつのまにか、20名以上いたはずの部署の人員は、半数にまで減ってしまったのだった。
雰囲気は最悪で、穴埋めに雇った派遣社員さえも女性社員のいびりによって数週間で辞めるという事態が続いている。
ただでさえ忙しい決算期であるが、絶対に遅らせてはいけない支払関係を片付けるのに必死で、引継ぎをろくに受けていない。春菜の業務も滞る一方だ。
-いつまでこんな日が続くの…?25歳OL、仕事ばかりやっている場合ではないのに!
翌日―。
経理部の中では、たいてい春菜の出社時間が1番早い。
いつも通り春菜が出社したら、見知らぬ女性が、スラリとした脚を組み、春菜の隣の席に座っていた。経理部のグレーの机に似つかわしくない、ずいぶん派手な女だ。
足元にはマノロブラニクが光り、手首にはカルティエのベニュワール。そして何より目立つのは、タイトなラインのワンピース。深紅の口紅とネイルに思わず目を奪われる。
それらを着こなす、美しいが冷たい印象を与える顔立ち。年齢は分からない。貫禄があるので40歳と言われても納得するし、瑞々しい肌は30歳と言われても驚かない。
椅子に座っていても、ワンピースから伸びる長い脚を見れば、抜群のスタイルであることが容易に想像できる。
まるで外資系ファッションブランドのPRのような女が、この部屋の一角に、なぜか座っているのだ。
ーあっ…もしかして広報部の中途入社の方かしら…。
部署を間違えているのかもしれない。そう気がついた春菜は恐る恐る声をかける。
「あの…何かご用でしょうか?」
すると、謎の美女はさらりと答えた。
「今日からこちらでお世話になる経澤理佐です。よろしくお願いいたします。人事の方に、ここに座って待っていてと言われたんですけど…」
「あの、部署を間違えていませんか?ここは経理部ですけど…」
春菜がそう言いかけたとき、部長が声をかけながら入ってきた。
「よく来てくれたね、経澤君。昨日の今日で無理言って申し訳ないけど、今日からよろしく頼むよ。」
ー…ってことは、彼女、経理部に…!?
春菜は目をぱちくりさせる。
部長の口ぶりによると、どうやら昨日の面接で急遽決まったようだ。
確かに経理部は人員不足だ。だからと言って、誰でもいいわけではない。教える方の身にもなってほしい。
春菜はこっそりため息をついた。
-神様はどこまでも意地悪だわ…。
始業時刻が迫り、経理部に社員が出社してくる。しかし皆揃って、明らかに部署から浮いている理佐の風貌にギョッと驚き顔を見合わせる。
彼女はというと、そんな反応にはお構いなしで、すました顔でスマホをいじっている。経理部の雰囲気は朝から異様だ。
この記事へのコメント
と、愚痴りつつ今から出社…
面白い話に期待!