エビージョの恋 Vol.2

エビージョの恋:「この人を好きになれたら、幸せなのに」誠実な男を選べず、不毛な恋を貫く女の闇

―いつかは、別れると決めてる。彼とも、この部屋とも、そして“恵比寿”ともー

......でも、それは今日じゃない。

上司と道ならぬ関係に足を踏み入れてしまった志乃(28)は、恵比寿在住。

妙齢の女は、多くの不安や葛藤を抱えながらも、甘く刺激的な恋から抜け出せずにいた

一見、華やかに見える“エビージョ”たち。

その隠された素顔と、“恵比寿”という街が若者を魅了する真意とは...?


―志乃ちゃん、今日は会えて嬉しかったです。今度はぜひ二人で食事でもどうかな?―

ベッドサイドのスマホに手を伸ばすと、哲也から早々にLINEが届いていた。サトシから紹介された、感じのいい青年だ。

「だれ?男?」

志乃がスマホをいじる気配に気づいたのか、隣で眠っていた浩一が不機嫌そうに目を覚ます。

「うん」

「そいつ、志乃に気があるの?」

「さぁ。でも食事に誘われたわ」

わざと正直に答えると、浩一は志乃からスマホを取り上げ、乱暴に手首を掴みベッドに押し倒した。

「俺に、仕返ししてるつもりなの?」

怒りと悲しみが混じったような視線をじっと受け止めると、志乃の胸は満ち足りていく。仕事場ではクールにきめているのに、彼は志乃の前で、よく子どものように感情的になる。

「そうね。でも本気になっちゃうかも。浩一さんは、いつまで経っても人のモノだから」

さらに意地悪く、志乃は彼を挑発する。

「息子の受験が終わるまで待ってくれ」という浩一の言葉に縋るように日々を過ごしていたが、それはだいぶ前に終わっているのだ。

「...志乃の気持ちは分かってる。でもまだ息子の入学の手続きもあるし、どうしても難しいんだ。志乃と一緒になるためにも、下手な時期に急いで別れるのは得策じゃないんだよ」

同じセリフを、これまで何度耳にしただろう。待ちわびた期限がどんどん先延ばしになるのは、すでに慣れっこになってしまった。

志乃の無言を承諾と捉えたのか、浩一は甘い声を出す。

「そうだ。志乃が行きたがってた『Ode』の予約、来週とれたよ。絶対に一緒に行こう」

そうして彼に強く抱き締められたとき、志乃のスマホは破壊音にも似た音を立ててベッドから落ちた。

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