エビージョの恋 Vol.1

エビージョの恋:「いつかは、別れると決めてる。」道ならぬ恋にハマった女が、恵比寿に住む理由

―いつかは、別れると決めている。彼とも、この部屋とも、そして“恵比寿”ともー

......でも、それは今日じゃない。

上司と道ならぬ関係に足を踏み入れてしまった志乃(28)は、恵比寿在住。

妙齢の女は、多くの不安や葛藤を抱えながらも、甘く刺激的な恋から抜け出せずにいた。

一見、華やかに見える“エビージョ”たち。

その隠された素顔と、“恵比寿”という街が若者を魅了する真意とは...?


薄暗い寝室に、浩一の小さな寝息が響く。

志乃は汗ばんだ彼の腕に頭を預けながら、このまま心地いい睡魔に身を委ねてしまおうか、その凛々しい横顔を眺めていようか、まだうまく働かない頭で甘いジレンマに酔う。

すると、ベットサイドテーブルの浩一のスマホが、何かを主張するように激しく発光した。

―新着メッセージがありますー

その画面が思わず目に入り、束の間の幸福から一転、すっと胸の奥が冷えるような感覚に襲われる。

表示はされずとも、送り主は容易に想像がついたからだ。

深夜0時過ぎ。自宅で彼の帰宅を待つ妻が痺れを切らすのには、ちょうどいい時刻である。

志乃はサイレントモードに設定されたスマホを、裏返しにしてそっと置き直す。あと数分もすれば、今度はけたたましいアラーム音が部屋に鳴り響くだろう。

―やっぱり、起きてよう。

そう決意し、今度は腕から脚の先までを、浩一の身体に強く巻きつける。

少し湿った肌の感触、熱い体温、そして、規則正しい心臓の音。

少なくとも今この瞬間、この男は志乃だけのものだ。

しかし、無防備な彼を独占する優越感に浸れたのは、やはりほんの数分の間だけだった。

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