―いつかは、別れると決めている。彼とも、この部屋とも、そして“恵比寿”ともー
......でも、それは今日じゃない。
上司と道ならぬ関係に足を踏み入れてしまった志乃(28)は、恵比寿在住。
妙齢の女は、多くの不安や葛藤を抱えながらも、甘く刺激的な恋から抜け出せずにいた。
一見、華やかに見える“エビージョ”たち。
その隠された素顔と、“恵比寿”という街が若者を魅了する真意とは...?
薄暗い寝室に、浩一の小さな寝息が響く。
志乃は汗ばんだ彼の腕に頭を預けながら、このまま心地いい睡魔に身を委ねてしまおうか、その凛々しい横顔を眺めていようか、まだうまく働かない頭で甘いジレンマに酔う。
すると、ベットサイドテーブルの浩一のスマホが、何かを主張するように激しく発光した。
―新着メッセージがありますー
その画面が思わず目に入り、束の間の幸福から一転、すっと胸の奥が冷えるような感覚に襲われる。
表示はされずとも、送り主は容易に想像がついたからだ。
深夜0時過ぎ。自宅で彼の帰宅を待つ妻が痺れを切らすのには、ちょうどいい時刻である。
志乃はサイレントモードに設定されたスマホを、裏返しにしてそっと置き直す。あと数分もすれば、今度はけたたましいアラーム音が部屋に鳴り響くだろう。
―やっぱり、起きてよう。
そう決意し、今度は腕から脚の先までを、浩一の身体に強く巻きつける。
少し湿った肌の感触、熱い体温、そして、規則正しい心臓の音。
少なくとも今この瞬間、この男は志乃だけのものだ。
しかし、無防備な彼を独占する優越感に浸れたのは、やはりほんの数分の間だけだった。
この記事へのコメント
はぁ…お腹空いているのかな。
最近、結婚って何だろうって考えてしまいます。
ずっと1人の人を愛していくのは不可能なんですかね。
恋愛感情は3,4年でなくなるって聞いたことあるし。
いい旦那で好きだったけど、あることで悩んでるうちに、旦那に対する愛情が冷めつつあります。
思い切って旦那に打ち明けたけど、旦那は改善してくれる兆しが見えません。
だからといって不倫するつもりはないですが、こんな冷めたまま、人生を送...続きを見るっていくのかなって思うと寂しいです。
世の夫婦はどうしてるのかなぁ…。
こんな薄っぺらい男、さっさと別れないと
今期逃すよ。
その友達も、10年も付き合って浮気されまくってまで
別れないなんて。
もう気の毒すぎで可哀想。