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  • 銀座女子との100日 Vol.1

    銀座女子との100日:サヨナラ恵比寿女子。恵比寿からの卒業を試みた男の、苦い経験

    「銀座はね、子供の頃からお母さんに連れられてよく来てたんだ」

    歩行者天国になっている中央通りを歩きながら、泉の話を聞けば聞くほど、タクミはある思いを確信していた。

    —泉ちゃんって、思ってた以上にお嬢様なんじゃないの…!?

    泉は生まれも育ちも文京区で、現在も実家暮らし。幼稚園から、お嬢様が集まると言われる有名私立に通い、現在は日系証券会社のバックオフィスで働いている。

    10代の頃は渋谷で買い物することもあったそうだが、結局銀座が一番しっくりくるとのことで今は銀座でしか買い物をしない。

    一緒に銀座を歩いていると高級店ばかりを指差しながら「ここのお菓子は美味しいよ」とか「ここ、子供の頃から通ってるんだ」、「ここのお店の方とは家族ぐるみで仲良くさせていただいてるんだ」などのエピソードがぽんぽん出てくる。

    明らかに、今までタクミの周りにはいなかったタイプの女性だ。

    たしかによくよく泉を見てみると、恵比寿にいる女性たちとは似て非なる部分があることに気づく。

    恵比寿の女の子は親近感の持てるタイプが多く、キラキラと明るい印象。初めて会っても、盛り上がればまるで昔からの友達のようにお酒が飲めるような女性。

    対して泉は、綺麗でしっとり落ち着いた、柔らかな明るさ。親しき仲にも礼儀あり、としっかり躾けられて、どんなに仲良くなっても礼儀を重んじるような女性だ。

    宝石に例えるなら、恵比寿女子がダイヤモンドで、銀座女子はパールだろうか。

    銀座が好きなんて、背伸びしちゃって可愛いな、なんて思っていた自分が、タクミは急に恥ずかしくなってしまった。

    「ねえ三越に入っていい?ちょっと春物の靴を見たくて」

    タクミは言われるまま泉について三越に入ると、そこは多くの女性で賑わっていた。

    —デパートなんて、めったに来ないからなぁ…。

    慣れない雰囲気になんとなく居心地の悪さを感じて、タクミはただ泉の後ろを歩き、一緒に靴を見て回った。

    「なんだか付き合わせてばっかりで申し訳ないから、5階に行く?」

    目当ての靴を買って上機嫌の泉から当たり前のように聞かれるが、タクミは答えに困った。

    —5階って、何があるんだ?

    だが、言えなかった。何となく。

    男の小さなプライドと言えばそれまでだが、3歳年下の泉を前に、タクミは小さなプライドを守りたかった。

    「うん、そうだね。行こうか」

    そう答えて、何でもないというようにエスカレーターに乗って、5階へ向かった。

    —なんだ、メンズフロアか。…あれ?

    綺麗にデイスプレイされたネクタイを横目に見ながら歩いていると、視線の先に見覚えのあるものがあった。

    —あれ、確かこの前アキラさんの家にあったような。


    先がトリガータイプになっていて、真っ白なボトルデザインがクールで個性的。どうやらスキンケア用品のようだ。

    「私、別にイケメンじゃなくてもいいけど、清潔感がない男の人は苦手なんだよね」

    その商品が並ぶ一角で、泉が突然言った。

    「その点、アキラさんって、肌がきれいですごく清潔感あったよね。さすが理沙さんの旦那さんだねって、帰りにみんなで言ってたんだ〜」

    タクミは、無意識で自分の頬に手を当てた。

    「俺ってどうかな?」なんて聞けるはずないが、なんだか急に自分のことが心配になる。


    突如芽生えたモヤモヤ。


    そのせいで、タクミは自分らしさが出せないまま食事も終え、別れの時間が来てしまった。

    「泉ちゃん、今日はありがとう。また来週にでもご飯行こうよ」

    タクシーを待っている間にタクミが言うが、泉は満面の笑みでこう言った。

    「うん、ありがとう。来週は忙しくて予定がまだ見えないから、こちらから連絡するね」

    タクミだって知っている。これは体のいい断り文句だ。永遠に連絡がこないパターンだ。

    だが、しつこい男は嫌われると思い、この夜は一旦これで別れた。

    それから数日後、タクミは1通のLINEを送った。

    “泉ちゃん。恵比寿に、是非連れて行きたいお店があるんだ”

    サッカーだって、アウェイよりホームの方が勝率は高い。であればやはり、泉と一度恵比寿デートをしなければ、諦めるにも諦めきれない。

    送ったLINEは、思いがけず数秒で既読になり、タクミは慌ててアプリを閉じる。

    すると3秒後に、聞き慣れた音と同時にタクミの手の中でスマホが小さく震えた。

    見たくないものを見るように、タクミが目を細めてスマホを見ると、そこには意外な文字が浮かんでいた。


    ▶NEXT:3月15日 木曜配信予定
    恵比寿デートでも撃沈!それでもタクミが泉を落とせたワケとは?

    タクミが銀座三越5階メンズコスメで見つけたスキンケア用品の詳細はこちら!

    ◼衣装協力:P1男性 長袖ポロシャツ3万6,000円、パンツ2万6,000円/ともにアクアスキュータム(レナウン プレスポート03-4521-8190)女性 ニット3万7,000円、スカート4万円/ともにルーム エイト(オットデザイン03-6804-9559)、ネックレス1万9,000円/ポール・スチュアート(SANYO SHOKAI0120-340-460)P2男性ジャケット6万3,000円、Tシャツ7,500円、パンツ2万3,000円/すべてポール・スチュアート(SANYO SHOKAI0120-340-460)、ベルト1万8,000円/アクアスキュータム(レナウン プレスポート03-4521-8190)女性 ライダーズジャケット9万8,000円/ロゥタス(ストローラーPR03-3499-5377)、ドレス10万5,000円/ロキト(アルピニスム03-6416-8845)

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