“ゆとり”のトリセツ Vol.3

“ゆとり”のトリセツ:優先すべきは“費用対効果”。愛想笑いの下にある、ゆとり世代の本音

「そういえば上野、彼氏いなかったよな?結婚とか考えないの?」

「もう長年居ないですよ。結婚とか考えようにも相手が居ませんし!」

自虐的に言うが、顔もスタイルも人並み以上の瑞希は決してモテないわけではない。

結婚願望はそもそも無いが、そんな話を先輩にする必要は無いので、適当に誤魔化す。

社内で快適な人間関係を築き、先輩からも可愛がられることが、仕事をより”楽”に進めるコツだ。

愛想を振りまいて、嫌みじゃない程度にお世辞を言って。

仕事はきちんとやるけどプライベートはサッパリという体で、バランスを取る。

実際社内での瑞希の評価は、”美人で仕事は出来るがちょっとダメで可愛い後輩”と、程良いところに落ち着いている。


しかし今日は、この発言が仇となった。

「それなら良い奴居るから紹介してやるよ!俺の大学の同期なんだけど、彼女募集中だからさ」

―うわぁ、余計なお世話なんですけど…

思わず本音が顔に出そうになるが、かろうじて唇の右端を引きつらせるだけに留めた。

「ほんとですか!さすが先輩、頼りになります!」

ここまで本音と逆のことを言って可愛がられる必要があるのか…と思いながらも、瑞希は半ばやけっぱちで笑顔を作った。



「…ていうことで来週は餃子お休みすることになっちゃったんです」

最早土曜の定番と化した『タイガー餃子軒』で、瑞希はぷっくり餃子を頬張る。

「へぇ、上野さんが、デート。流石に化粧するんだよね?」

おかしそうに水野はハイボールをすすった。

向かいに座る瑞希は、今日もいつも通りどすっぴんだ。

「そりゃしますけど…なんでせっかくの土曜を人に気遣って過ごさなきゃいけないんですかね」

言いながら水野が注文したパクチー豆腐を、1枚たりともパクチーが落ちないよう慎重に自分の皿へ移す。

家から徒歩3分の餃子屋で、特に待ち合わせるでもなく適当な時間にお互い集まり、こうしてだらだらビール片手にくつろぐ方が、余程楽しい土曜の過ごし方ではないか。

しかし、瑞希はここでも、自分の考えが相手とはズレていたことを思い知る。

「じゃあさ、その次の土曜は空けておいてくれる?...デート仕様の上野さん、僕も見てみたいんだよね」

空になったハイボールのグラスの中で、カラリと音を立て、氷が崩れた。


▶NEXT:2月19日 月曜更新予定
恋愛無精の瑞希に転機は訪れるのか?ゆとり世代vs団塊ジュニア世代の行方は。

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