恋の大三角形 Vol.10

恋の大三角形:「結婚できないなら、別れたい」は恋愛後期に言っても駆け引きにならない

東京を生きる女たちは、もう気がついている。

「素敵な男の隣には、既に女がいる」という事実に。

自分が好きになるくらいの男を、他の目ざとい女たちが見過ごすはずがないのだ。

不動産会社で秘書をしている繭子は、商社勤務の洋平と付き合って2年になる。

しかし彼からプロポーズの気配がなく、さらには他の女の影を感じた繭子は、ある夜既読にならないLINEに嫉妬心を募らせ深夜に家を飛び出す

帰宅した洋平は繭子を優しく宥め、ふたりの関係は改善したように思われた。

しかし30歳の誕生日、「まだ結婚は考えられない」と言われてしまい、洋平と別れることを考え始める。


不器用な男


「小柳さん。できるだけ直近で、常務の空いてる時間を教えてもらえないかな」

声をかけられ振り返ると、角ばった顔をした大柄の男が私を見下ろしていた。彼が呼んだ小柳という名は、私の苗字である。

「…あ、はい。今、調べます」

急いで常務のカレンダーを確認する視界の隅に、シバユカの目線を感じる。

−経営企画部の日高さん。彼、絶対に繭子さんに気がありますよ。

洋平から「まだ結婚は考えられない」と断言され落ち込む私に、シバユカは突然そんなことを言い出した

まったく、何を根拠にそんなことを…。

変に意識してしまう自分を消し去るように、私は平常心で日高さんに向き直った。

「明日の、15時から30分なら時間取れそうですが」

「よかった!じゃあそこを押さえてください」

日高さんは大げさに膝を打ち、無駄に大きな声で私に礼を言う。

これまでしっかり彼の顔を見たこともなかったが、今改めて真正面から向き合っても、一つだけ言えるのはまったく好みではない、ということだ。

しかし顔を見上げたことで彼と目がばっちり合ってしまい、私は仕方なく首を傾げて会釈する。

−余計なこと、したかも。

そう思った時には、もう遅かった。

私の普段と違う反応に彼は柄にもなく頬をみるみる赤くし、なぜか腰をデスクにぶつけたりしながらバタバタとフロアを出て行ってしまった。

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