LESS~プラトニックな恋人~ Vol.9

LESS:プラトニックな恋人との決別。強引な男と体を重ねるたび、塗り替えられていく心

女が愛する男に抱かれたいと願うのは…


「何で、って…」

私は耳を疑った。理由なんて、わかりきっているはずだと思っていた。

私たちはもう何年も抱き合うことのできない、プラトニックな関係だった。むしろそれ以外に、私たちに別れる理由なんてないのだから。

「…そんなの、わかりきってるでしょう?私たちもう何年もレスで…私を抱こうともしないで…健太が、私を女として見てくれてなかったから」

「それは違う!抱くかどうかと、愛情は別だよ。俺は美和子を誰より愛してる。それは、自信を持って言える。女として見てないわけないじゃないか。確かに抱き合う回数は、その…減ったというか、なくなってしまったかもしれないけど、俺と美和子の間にはそんなことよりもっと大切な、深い絆があるんだよ」

抱くかどうかと、愛情は別?

もっと大切な深い絆?

もう最後かもしれないと思うからだろう。普段は温厚で声を荒げることなどない健太が、感情をあらわにして私を引き止める。

しかし彼の放つ言葉は何一つ、私には響かなかった。いや、むしろ、私を幻滅させたと言ってもいい。

…健太は、何もわかっていないのだ。

レスであるということが、愛する男に抱かれないということが、女をどれだけ惨めな思いにさせ、自信を失わせ、卑屈にさせてしまうかを。

「俺は美和子と一緒にいたい。結婚もしたい。そういうことも…別にしようと思えばできるし、それにもし子どもができなかったとしても、俺は美和子がそばにさえいてくれればそれでいいんだ」

美和子がそばにさえいてくれればいい。

それは美しい愛の言葉、なのかもしれない。男とか女とか性を超えた、何も求めない、存在そのものを肯定する究極の愛。

しかしそうやって彼がプラトニックな愛を語れば語るほど、私の心は健太からどんどん離れていった。

女が愛する男に求められたいと願うのは、性欲の問題じゃない。自分が選ばれ必要とされていることを身をもって実感できる、女としての存在証明だからだ。

−心だけじゃなくて、身体も求めて欲しい。

本当はそれを、伝えたい。しかしそう言ったところで、彼に私の本意が伝わるとは思えなかった。

「…健太は何もわかってない」

私はようやくそれだけ言うと、健太から逃げるようにして家を出た。


スーツケースを抱え、一目散に銀座のマンションに戻ると瀬尾さんが来ていて、部屋に入った途端に寝室へと連れて行かれた。

無言のまま荒々しく服を脱がす彼はいつにも増して強引で、私はまるで自分の心の隙を責められているかのように感じ、されるがままになった。

気持ちの切り替えができず......


【LESS~プラトニックな恋人~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo