2017.11.02
渋谷は美食の街だ…と、考える人は少ないだろう。だが、数は少なくとも大人が食事を楽しめる店は確かに存在する。その代表とも言えるのが『ビオディナミコ』だ。ディナーはもちろん、ランチでの人気も高い同店の魅力を余すことなくご紹介しよう。
密やかなロケーションでイタリアの郷土の味を
『BIOdiNAMICO』
渋谷駅前のスクランブル交差点から、公園通りをNHKホール方面へ。お洒落なセレクトショップなどが立ち並ぶ、渋谷区神南のとあるビルの2階。渋谷の中でも、〝真っ当な〞と言えるレストランがごく限られるエリアに『ビオディナミコ』は2009年にオープンした。
ぼんやりと灯るクラシカルな電灯と印象的なブルーの扉が、この店の目印だ。
扉を開けると、そこには白を基調にまとめられた空間が広がる。凛とした空気が漂いながらも、どこか温かみがあり、寛げる雰囲気だ。
実は、横浜『SALONE2007』や南青山『イル テアトリーノ ダ サローネ』と同系列、いわゆる〝『サローネ』系〞の一店であるこちら。リラックスできて、かつ味やサービスについては妥協しない食事が楽しめるとオープン以来、着実に評価を高めてきた。
現在のシェフである湯浅一生氏は、3代目の料理長。初代・辻大輔氏(現・千駄ヶ谷『コンヴィーヴィオ』シェフ)、2代目・高見博史氏(現・『サローネ』グループ統括料理長)から受け取ったバトンを手にして3年目となる。
テーブルには、その日に楽しめる料理のメニュー表が添えられる。ランチ7皿・ディナー8皿の月替りのコースは、一見すると創造的な印象を受けるが、それぞれに伝統料理の韻を踏んでいる。
2代目シェフ・高見博史氏時代からのディナーコースに常に組み込んでいるのが、「ラヴィオローネ」。熱いパスタの中から卵黄がとろりと流れ出る、という摩訶不思議な一品、初めて食するなら必ず驚きがある、見事なスペシャリテだ。
〝大きなラヴィオリ〞という意味の名を持つ「ラヴィオローネ」は、チーズや卵を使っていることからもわかるように、北イタリア固有のもの。湯浅氏自身も、北イタリアのエミリア・ロマーニャでの修業時代に食して感銘を受けた一品だという。
パスタ生地と、リコッタチーズやほうれん草、トリュフで作った周囲の詰め物には火を入れたいが、中央の卵黄は温まる程度に留められトロっとした食感が楽しめる。
使う卵のクオリティ、茹でる湯の水位や、生地の厚み、すべてを緻密に計算した結果、パルミジャーノの濃厚な香りが立ち上りコクのある卵黄が存在感を放つ、稀なるパスタが完成する。「パスタではありますが、これは〝卵を食べていただく〞料理なんです」とは、湯浅氏。
こちらも、定番メニューの魚料理「カチュッコ」。「5種類以上の魚介類のだしを使うのが本式です」と湯浅氏。ベースのスープは、タイやエビなどの出汁を別々に取って合わせている。ヒラメの下に添えられたイカスミの焼きリゾットも、エビの出汁で炊いたものだ。
〝クレアティーヴァ(創造的)〞な皿の中に郷土料理を落とし込む上で工夫している点を問うと、「コース構成では一品ごとのポーションが少ないので、それぞれの味の印象をくっきりと感じていただけるよう心がけています」
美味しいことはもはや当たり前。自分がイタリアで見たものを追体験してもらえる表現を、と3年目を迎えてますます意欲的だ。
こちらでは、特別なワインを楽しむことができる。『サローネ』グループのゼネラルマネージャー・藤巻一臣氏が2015年より準備を進めていた山形県南陽市の自社ワイナリー「GRAPE REPUBLIC」が、今年9月醸造許可を得て本格始動。
ナチュラルワインラヴァーの間で早くも話題のワインは、『ビオディナミコ』はもちろん、系列の各店でも味わうことができる。
本格イタリアンや希少なワインを、寛いで楽しめるリストランテ。こういう店を日常使い出来るようになってこそ、真の大人と言えるのかもしれない。
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この記事で紹介したお店
ビオディナミコ
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