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  • 誘惑する唇 Vol.3

    誘惑する唇:追う恋に疲れた時、好きだと言ってくれる男性に寄りかかるのはダメなこと?

    女の唇は、キスするためにある。

    花が甘い蜜で虫たちを引き寄せるように、唇で男たちの熱い視線を独り占めにする女がいる。

    どんな言葉を並べるよりも、それが効果的であることを、一部の女はすでに知っている。


    会社の先輩・康史に想いを寄せる堀川真樹(28歳)。食事会で知り合った竜太と銀座で偶然再会し、二人で食事をすることになった。その帰り道、竜太から突然キスされそうになり、真樹は走って逃げたのだった。


    ―真樹ちゃん、この前はありがとう。
    ―今週空いてる日があれば、食事でもどうかな?

    木曜の朝。スマホ画面に浮かぶ文字を見て、真樹はため息をついた。

    届いていたのは、竜太からのLINEだ。

    竜太のことを考える度に、同時に康史の顔が頭に浮かぶ。

    ―あの相手が康史さんだったら、どんなに幸せだったことか……。

    真樹は、何度もそう考えた。

    ―でも、キスしたわけじゃないし、もう会わなければいいんだし……!

    そうやって気持ちを切り替え、なんの後ろめたさもなしに、竜太からのLINEを既読スルーする。

    ブロックするほどでもないし、「ちゃんと読んでるけど、返事はしません」という、これもひとつの意志表示のつもりだ。

    それに今は、竜太なんかのことよりも康史のことで頭が一杯なのだった。

    明日の金曜日は、久しぶりに康史と食事に行く約束をしている。

    ゲランで買った口紅「キスキス マット」を使い始めて、初めてゆっくり会える日。康史が何か反応してくれたら良いなと考えて、真樹は浮かれていた。

    ちょうどその時、またスマホが震えた。どうせ竜太からだろうと思いながらスマホを見ると、そこには康史からのLINEが届いていた。

    ―ごめん、明日行けなくなっちゃった。

    その一文だけだった。

    このLINEに真樹は、言いようのない違和感を覚えた。

    ゲラン_PC3

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