それも1つのLOVE Vol.20

それも1つのLOVE 最終回:”凡庸な男”と結婚した女が、3年後に思うこと

それもまた1つのLOVE。

愛してるとは違うけど、愛していないとも言えない。

あなたの身にも、覚えはないだろうか…?

女性誌でライターをしている奈々は、高校時代に淡い恋心を抱いていた翔平と渋谷で再会。しかし彼はInstagramで華やかな私生活を公開する美女・衣笠美玲と特別な関係にあることを知り心乱される。

翔平に誘われるまま一線を超えた奈々は、ステディな彼・優一と別れ翔平にハマっていくが、彼の無責任さにようやく気づき、優一の元に戻ることを決意する


優しさは、強さ


「久しぶり」

先に来ていた優一がそう言って笑いかけてくれたとき、奈々は凝り固まっていた筋肉が緩むように、じんわりと心が温まるのを感じた。

優一は、再会の場所に『鋳物焼肉3136』を指定した。

昔から優一とのデートは焼肉ばかりで「色気がない」と不満に思っていたりもしたが、『鋳物焼肉3136』は一席ごとにパーテーションで仕切られ、モダンな内装がおしゃれなお店。

優一なりに気を使ったのだろうと思うと、そんな彼を愛しく感じる。

「奈々、ちょっと痩せたんじゃない?」

そんなことを言って、優一はまるで父親のように奈々の皿に次々肉を盛ってくれる。

彼の前で奈々は、何一つ無理をする必要がない。

しかしありのまま存在すれば良いという安心感は生ぬるくて、浸かっている時にはその幸せに気づけなかった。

「私、やっぱり優一がいなきゃダメ...」

小さく呟いた言葉に、優一は答えてくれなかった。

こっそり彼の表情を伺うと、唇を噛み、無理やり笑顔を保っているように見えて、奈々はそれ以上の言葉を紡げなくなってしまった。

彼の痛みに、心を抉られた気がして。

「本当にごめんなさい...」

優一は、いつも優しい。穏やかで、感情をぶつけたりしない。そんな彼を凡庸だと思っていた自分がいかに馬鹿だったかを、今になって思い知る。

優しさは強さであり、寛容は愛なのだ。

「もう、いいよ」

彼はそう言ったが、過去の過ちが消えることはない。

それでも再び自分を受け入れようとする優一の存在を、奈々は心底ありがたく思った。

彼を、絶対に裏切ってはいけない。今度こそ、もう二度と。

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