それも1つのLOVE Vol.15

それも1つのLOVE:刺激を欲するのは、満たされてる証。それに気づけなかった女の過ち

それもまた1つのLOVE。

女性誌でライターをしている奈々は、高校時代に淡い恋心を抱いていた翔平と渋谷で再会する。

しかし彼はInstagramで華やかな私生活を公開している衣笠美玲と特別な関係にあることを知り心乱される。

翔平に誘われるがまま一線を超えた奈々は、ステディな彼・優一とも別れどんどん翔平にハマっていく

しかしいつまでも煮えきらぬ翔平の態度に、不信感を持つようになり...。


無責任な男とズルい女


我に返った時、奈々は渋谷のスクランブル交差点に立っていた。

無意識に優一の元に向かおうとしていることに気がつき、その浅ましい考えに自分で自分を疑う。

優しい優一に甘えるだけ甘え、同棲の提案も、一度は承諾しておきながら自分勝手に翻意した。

きちんと将来を見据え、奈々の幸せを考えてくれていた優一。そんな彼を裏切ったのは自分だというのに、私は何をしようとしているのだろう。

喧騒は、孤独を際立てる。

すれ違う人と肩がぶつかり、足元がふらついた。これだけたくさんの人がいても、誰も自分を気にしていない。いよいよひとりになってしまった現実を、奈々は改めて痛感するのだった。


−今はまだ、考えられない。


そんな風に逃げた翔平の言葉を、黙って呑み込めば良かったのかもしれない。

そうすれば、少なくとも今夜はひとりにならずに済んだだろう。

目を合わせようともせず、面倒だという心の声がその表情から伝わってきても、見て見ぬふりをしていれば。

−俺も、奈々に逢いたかったよ。

翔平のその言葉に、嘘はないのだろう。それは、抱きしめられた腕の強さでわかる。ただしそれは、あの時あの瞬間の話。

それでも最初は、一瞬でも満たされれば幸せだった。

しかしその後に訪れる喪失感は、じわじわと心を蝕む。恐怖心から、奈々はつい答えを性急に迫ってしまったのだ。

一瞬の愛で満足できるほど、女は無欲でいられない。

奈々はしばらく立ち止まって逡巡していたが、踵を返すとJRの改札へと戻った。

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