人形町の女 Vol.11

人形町の女 最終回:離婚後、ようやく手に入れた幸せ。理由探しの人生に終止符を打った出来事

結婚して家を買い、そして子どもを授かる。

今まで「幸せ」だと信じて疑わなかったもの。

しかしそれを信じて突き進んでいくことが、果たして幸せなのだろうか?

外資系化粧品会社でPRとして働く祐実、29歳。

結婚生活3年目、夫の浮気が発覚したのをきっかけに、話し合いを経てついに離婚を決意離婚の手続きを終え新しい生活を始めた祐実に、さらなる転機が起こる。


人形町の『ユニゾン・テイラー・コーヒー・アンド・ビール』で、祐実はコーヒーを飲んでいた。

ここは5月にできたばかりの新店で、ハンドドリップのコーヒーをゆっくりと味わうことができる、お気に入りの店だった。

「ごめんね、待った?」

駅の階段を急いで駆け上がったと思われる寛が、息を切らしながらやってきた。

「ううん。大丈夫」

そう言って、祐実は読みかけの仕事の資料を閉じた。

マネージャーに昇進してから忙しさは格段に増したが、やりがいはその何倍にも増えた。毎日深夜まで残業しているので、「社内一のワーカーホリック」と言われている上司の麗子も、呆れているくらいだ。


30歳までに結婚。
35歳までに出産。


昔描いていた人生の計画は頓挫したが、ないものを嘆くより今の幸せを噛みしめて前に進んでいくことが大切だと、身を持って感じている毎日だ。

寛が「会社を辞めて鎌倉に戻る」と言った日から、ちょうど半年が過ぎていた。近くに住んでいる間に互いの家を行き来する仲になり、引っ越してしまってからも、付き合いは続いていた。

「妻に浮気された」という寛の秘密を知って以来、二人の仲は急激に深まったのだ。

今日は日本橋にあるフレンチレストラン『ラペ』に行く予定だった。

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