それも1つのLOVE Vol.17

それも1つのLOVE番外編Ⅰ:忘れ得ぬ女性と再会。人妻となった彼女からの危険な誘惑

それもまた1つのLOVE。

愛してるとは違うけど、愛していないとも言えない。

あなたの身にも、覚えはないだろうか…?

今年32歳の西嶋優一は、某大手食品メーカー本社に勤務するサラリーマン。

およそ1年半前にお食事会で出会った桜井奈々とステディな関係を築いており、結婚を前提に同棲を開始。結婚目前、のはずだったが...。

一度は了承したはずの奈々が、急に態度を豹変させ家を出て行ってしまう。そこにはありありと、別の男の影があった。

今回は、奈々と別れた優一が、再びヨリを戻すまでのお話。


不穏な兆候


何かが変だという兆候は、薄々感じていた。

−私、千駄ヶ谷の家に戻ろうと思う。

奈々が突然そんなことを言いだしても取り乱さなかったのは、遅かれ早かれそうなるだろうと心の奥底で覚悟できていたからである。

妙に頻繁にスマホを確認したり、心ここにあらずの目をしたり、話の相槌がワンテンポ遅かったり。

どこのものだか知らないが、奈々が突然高そうなコーヒー豆を買って帰って来た時も不穏な気配を感じた。

しかしその違和感に、優一はずっと気づかぬふりをしていた。

奈々が朝帰りした日も、「仕事が終わらなくて」という見え透いた言い訳に納得しているふりをした。

そうやって彼女の心が離れていくのを静観していたのは、ただただ平和な日常を守りたかったからに他ならない。

他人の嘘を暴いたり、責めたりすることが、優一は昔から苦手だった。

男の影を感じた早い段階で介入することもできたかもしれない。しかしそんな風にしてつなぎ止める愛に、価値があるだろうか。

奈々がすべての荷物を引き上げてしまった夜、ひとり残された優一はしばし呆然と玄関で立ち尽くしていたが、彼女の残り香が消える頃、そんな優一を救うようにしてLINE着信音が鳴った。

我に返った優一はスマホを手に取り、ぼんやりした頭でゆっくりと指を滑らせる。

そこに表示されていた女の名前は、優一の傷ついた心にすっと染み入った。

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