東洋経済・東京鉄道事情 Vol.65

勘弁して!朝の通勤時間帯で、大手私鉄いちばんノロノロ運転選手権

次は東急だ。東急東横線の横浜─渋谷間は24.2キロメートルと比較的短い路線のため、非常に本数が多い。横浜発の列車は、急行・通勤特急・各駅停車を合わせて6時台は13本、7時台は18本、8時台は20本もある。最も遅い各駅停車は所要時間54分、表定速度は26.9キロだ。

田園都市線(中央林間─渋谷・31.5キロメートル)は、朝ラッシュ時は基本的に準急と各停が交互に運転されるパターン。途中の長津田駅始発も数多く運転されるため、始発の中央林間駅は各駅停車の本数が多い。

7時台に入ると2本だけ準急があるほかはすべて各停で、7時14分発から8時09分発まで、各停が13本連続する。最も遅い各駅停車は所要時間70分、表定速度は27.0キロだ。

特急がいちばん遅い?

速いというイメージの京浜急行電鉄(京急)はどうだろうか。京急のメインルートは本線と久里浜線をまたがって走る三崎口─品川間の全長65.7キロメートルだが、三崎口発は全日・全時間帯、特急か快特しかない。

したがって最も遅いのが特急となるが、いちばん表定速度が低い7時16分発の押上行きでも所要時間92分、表定速度42.8キロ。まさに「急行電鉄」の名に恥じない速度だ。

だが、今回の対象にはならなかったものの、浦賀―品川間(56.7キロメートル)を走る普通列車には、実に所要時間138分・表定速度24.6キロという列車も存在する。多くの駅で優等列車の待避を行うためだ。特急や快特の速さを重視していることがわかる。

ラストは相模鉄道(相鉄)。相鉄線(海老名─横浜・24.6キロメートル)の海老名駅発は、7時台が特急4本、急行11本で各駅停車はなし。8時台は特急3本、急行4本に快速が2本、そして8時42分にわずか1本の各駅停車があるが、これも所要時間43分・表定速度34.3キロとなかなか速い。

一方、いずみ野線の湘南台―横浜間(21.8キロメートル)は打って変わって5時台から8時37分発まですべてが各駅停車。最も遅いのは所要時間44分で、表定速度は29.7キロであった。

今回のように「遅さ」をリサーチすると、時間帯によって全列車が各駅停車になったり、あるいは優等列車のみになったりと、各社が朝ラッシュ時の多くの乗客をいかに運ぶべきかを考えた工夫のあとが垣間見られて興味深い。

鉄道には速さも大事だが、乗降客の多い大きな駅も、逆に小さな駅もできるだけ分け隔てなく、人々が便利に使えることが大切なのだ。

著者
東良 美季 :ライター

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