―高史と、会いたいけど会いたくない……。
麻里子の心が振り子のように揺れるのは、高史からの意味深なLINEのせいだ。
高史に会うまで、あと3日もある。
別れ話を覚悟しながら過ごす毎日は、じわじわと崖っぷちに追いやられているような焦りと不安でいっぱいで、何をしても心から楽しめない。
オフィスのデスクでパソコンに向かっていても、1分おきにスマホを見てしまう。
次に会うまで、高史からの連絡はきっとこない。
わかりきっていることなのに、無駄にLINEやSNSを開いて、落ち着かない気持ちをやり過ごす。
―そういえば……。
ふと思い出して、智美とのトークをタップした。あの動画を、結局まだ見ていないことを思い出した。
―これを見たら、仕事にとりかかろう……!
そう心に決めて再生する。画面には、生まれたての赤ちゃんが映り、まだ見ていなかったシーンになった、その瞬間。
スマホ画面が、電話の着信画面に切り替わった。それを見て、大きく一度まばたきをする。
画面に表示された名前を見て、麻里子は慌てて電話にでた。
女が女になる年齢
30歳までには―。
東京のいたるところで、呪文のように囁かれるこの言葉。
そのせいか、年齢を重ねることを嫌悪する女は多い。
だが、女には、女になる年齢があるのをご存知だろうか。
それが30歳なのかもしれない。
その時こそ、真の女としての人生が始まるのだ。