2011.02.21
未来の老舗候補! いま、期待の鮨屋 Vol.3鮨 あんじょう
好物を頬張るシンプルな幸福が還ってきた
東京の町中にあるもの。そば屋、ラーメン屋、焼き鳥屋、そして鮨屋。以前、地上げで移転再開業を余儀なくされたある大将が言っていた。「同じ町に開け直す時にさ、同業さんが多くて、結構、距離感とか気兼ねするんだよ」。けれどそれほどに鮨屋は東京になくてはならないもの。高い店、安い店。ストイックな店、ざっくばらんな店。お客の気分と懐具合で店を選べる。なんて贅沢なこと!
西麻布交差点に『鮨 あんじょう』を開いた竹内進氏は、恵比寿『松栄』で18年修業の後、昨年末に独立した。旬の刺身と手を施しすぎないつまみでいい具合に飲んで、ちゃんと握りを食べて欲しい。そのスタイルはまさに、『松栄』で学んだものだ。
お客が来店するとカウンター下から出されるネタケースには、その日、彼がいいと思った素材だけが並ぶ。はしりも旬も名残もあるが「これは何?」と気軽に聞けるのが、この店のいいところ。お客が作業を見て楽しめるようにと、まな板は2枚重ねた。40歳という年齢を感じさせない引き締まった幼顔が、ここでは空気をプラスに転じさせる。酢飯に赤酢、ネタによってはたまり醤油。小さな冒険はしても、焦がれ続けた江戸前のきわは外さない。
やっと、還ってきたんだね。「おかえり、町のお鮨屋さん」。
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