2017.05.29
華麗なるお受験 Vol.1目指すのは、世界のトップ層
インターで学ぶ子どもたちは、日本の義務教育課程を修了していない。それゆえ、日本の高校や大学に進学する資格を得られない。
−そこまでして、なぜわざわざインターに?
我々の質問を予期していたのだろう、エミさんはかぶせるように答える。
「そもそも、東大も早慶も目じゃないってことです」
ぴしゃりと言い切られ、取材班は思わず「はぁ」と間の抜けた声を出してしまった。
ご存知の通り、英国タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が毎年発表している世界大学ランキングにおいて、東京大学はトップ10にも入っていない。
2016-2017年の順位は、実に39位である。(ちなみに、アジアのトップは中国の北京大学で29位。)
「子どもたちには、小さくまとまって欲しくないんです。広い視点を持ち、世界で活躍できる人材になってもらいたい」
東大や早慶を出ても、世界で活躍できる人材にはなれない。エミさんは続ける。
「息子が通うインターは9年生(日本でいう中学3年生)までしかないので、卒業後は家族でアメリカに移り住み、現地のハイスクールに通わせようと考えています」
子どもの教育のために移住?!
常識では考えられない−。そう思ってしまったが、その常識こそがエミさんの言う「小さくまとまった」人間の思考回路なのかもしれない。
とはいえファミリーで海外移住する日本人家族はもちろん少数。ごく一部の優秀な生徒は、海外のボーディングスクール(全寮制の進学校)に進学、その他は日本国内のインターナショナルハイスクールやアメリカンスクールに進む子どもたちが大半だという。
そして、世界のトップレベル...スタンフォード、オックスフォード、アイビーリーグ*加盟校やMIT**などを目指すのである。
ここで、取材班は覚悟を決め、もっとも気になるあの質問をぶつけてみた。
−ちなみに、学費は年間どのくらいかかるものなのでしょう…?
インターの学費が高額であることは、もちろん知っていた。しかしエミさんの回答は予想を大幅に上回る、驚愕の金額であった。
「そうですね…純粋な学費は250万程度ですが、それだけでは済まないので。1人あたり、年間300万は超えていますね。それを5歳から10年間***なので…計算すると恐ろしいですね(笑)」
年間300万?!
ここで整理しておくが、日本の義務教育制度を享受し、公立の小・中学校に通えば授業料や教科書代は0円、その他費用も微々たるものである。
それだけの金額を子どもの学費のために、10年間も払い続ける親が存在するとは…目を丸くする取材班に、エミさんは続けた。
「息子の通うインターで日本人は少数です。お父さんの仕事で日本に駐在している外国人夫婦の子どもたちがほとんど。そういう方は、本国の会社から補助が出ますから」
「そういう意味では、日本人でインターに通わせている親こそ、いったい何のお仕事をされているんだろう?という方ばかりですね(笑)」
ちなみにエミさんの経歴はというと、上智大学を卒業後、出産前まで外資系投資銀行に勤務していた才色兼備である。ご主人も同業で、現在は投資ファンドをご自身で経営されているそう。
ため息が出るほど華麗な経歴を持つ2人だが、上には上がいるのだと言う。
「インターでは我が家なんて…という感じです。いらっしゃる日本人夫婦は億レベルの収入がある、IT系や飲食系経営者ばかりで」
しかし世界各国の子どもたちが集まるインターは、日本の私立学校とはまるで風土が違う。
皆それぞれ違うバックグラウンドを持っていることが前提であるから、お互いの出自や生活レベルを探り合うような人はいないのだという。
「ホームパーティーや、家族ぐるみで出かけたりすることも多いですが、マウンティングの類は一切感じたことがないですね」
*アメリカ合衆国北東部にある、名門私立大学8校の連盟。
**マサチューセッツ工科大学
***学校によるが、エミさんが子どもを通わせるインターは日本でいう年長〜中学3年までの10年間のカリキュラム
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