東洋経済・東京鉄道事情 Vol.59

夏場は地獄!渋谷駅でなんと最長766mの移動を強いるのは、あの乗り換えだ!

では、東横線が地下化される前と後ではどの程度移動距離が変化しているのだろうか。

地下化後の今回のデータでは、同線と他線の乗り換えの際、階段などの上下移動も含めて実際に歩く距離を示す「乗換え移動距離」は平均346.3メートル。地下化前の2010年のデータでは307.2メートルだったため、39.1メートル延びたことになる。所要時間は312.9秒から334.3秒へと21.4秒延びた。おおむね各線間の乗り換えに5分半ほどかかっている計算だ。

意外に平均値が延びていないのは、地下化で経路によっては距離が短縮されたケースもあるためだろう。だが「上下の移動距離」は圧倒的に延びた。東横線—井の頭線間の乗り換えでいえば、従来は11メートルだった上下の移動距離は28.2メートルに増加。平均値でも7割以上増加し、約20メートルとなっている。エスカレーターなども整備されているとはいえ、面倒になった乗り換えが多いのは事実だろう。

上下移動距離が約5倍になった下北沢

東横線の渋谷駅と同時期に小田急線が地下化された下北沢駅(世田谷区)も、乗り換えの距離と時間が大幅に延びた駅だ。同駅は小田急線と京王井の頭線の接続駅。かつては小田急線が地上1階にあり、同線をまたぐ井の頭線との乗り換えは階段を少し上り下りするだけだったが、現在は小田急線ホームが地下3階に移動。長大なエスカレーターを経由しての乗り換えとなっている。

同駅の場合、現在の「乗換え移動距離」の平均は120.4メートル。以前は66.9メートルだったため、倍近く延びたことになる。水平移動の距離は115.5メートル。首都圏の平均値である191.6メートルよりは短い。

こちらも大幅に延びたのは上下の移動距離だ。以前は6.6メートルだったところが、現在は5倍近い32.4メートルに。首都圏の上下移動距離の平均値は14.3メートルのため、下北沢駅はこれを大きく上回っている。乗り換えにかかる所要時間も、68秒から192.5秒へと大幅に増加した。

同駅は2013年度に利用者数が大きく減少しており、理由として乗り換え利便性の低下が指摘されている。バリアフリー設備については現在のほうが充実しているが、以前は1分ちょっとで乗り換えられただけに、3分以上かかるとなれば「不便になった」と感じる人が多いのもうなずける。

では、地下化や駅の「改良」は利用者にとって不便になるケースばかりかといえばそうではない。地下化によって乗り換えの距離・時間ともに大幅に短縮された例もある。京王線の調布駅だ。

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