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  • 「結婚に不向きな男」というレッテルを覆した、5月の花火での出来事

    最初の印象はチヤホヤしてくるだけの男


    大輝とは、2ヵ月前に開かれた食事会で知り合った。

    目黒に住み、渋谷のインターネットメディア企業で営業をしている28歳。会社が近いことがわかり、食事会ではランチ情報の交換で盛り上がった。

    20代前半の頃であれば参加しなかったような食事会だが、最近のヨシミは守備範囲を広げている。


    一緒に参加した友人の話によると、大輝はヨシミに一目ぼれしたと言っていたらしく、ヨシミも悪い気はせず食事デートに2回行った。

    単純に、大輝の顔はタイプだった。綺麗に手入れされたヒゲも似合っており、よく笑う好青年。ただ、今まで知り合ってきた男性たちと同じように自分をチヤホヤしてくれるが、それはおそらく一時的なもので、落ち着いて付き合う相手ではないと思っていた。

    だから第一印象では、結婚不向きの方に振り分けていた。

    そんな大輝からある日の午後、3回目のデートの誘いがLINEで届いた。

    「今月、東京で最初の花火大会があるから一緒に行かない?」

    ―え、5月に花火大会?

    スマホ画面を見ながら、思わず一人で呟いた。場所はお台場らしいが、都内で5月に花火大会が開かれるなんて、今まで聞いたこともない。

    ヨシミは訝しみながらもOKと返した。

    大輝に言われた5月27日は、ちょうど予定も入っていない。正直なところ、大輝とはもう会わなくてもいいかなと思っていたが、5月の花火であれば、Instagramで”いいね!”も沢山もらえそうだ。そんな打算も少しだけあった。

    「良かった!当日は歩きやすい靴で来てね」

    大輝からの返信。直後にブタのキャラクターが、ビシッと親指を立てているスタンプが送られてきた。

    ―ちょうど最近、お台場に行ってなかったし。

    これまでに花火大会でのデートは何度も経験している。それに相手は大輝だ。特別な期待もなく、軽い気持ちで誘いを受けた。



    当日、普段は滅多に履かないペタンコのサンダルを選んだ。それに合わせたのはプラダのロングワンピース。ネイビーで、肌が白いヨシミによく映える、お気に入りの1枚だ。

    「おーい、ヨシミちゃん!」

    待ち合わせ場所に近づくと、大輝の声が聞こえた。

    2週間ぶりに会った大輝は、白シャツにデニムという、シンプルだからこそ着こなしに差が出るスタイルで登場。だがそのこなれ感が、余計に“結婚不向き”側へと彼を寄せてしまう。

    「あれ、ヨシミちゃんってこんなに小さかったっけ?」

    「うん、そうだよ。いつもは7cm以上のヒール履いてるから」

    ペタンコの足元を見ながら答えると、大輝は「そっか!今日は砂浜を歩くからちょうどいいよ」と楽しそうだ。

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