キラキラ光る海、太陽の下で飲むビール
「じゃあ、まずはビールで乾杯しようか」
会場に入るとまず、大輝がビールを買ってきた。
「ありがとう!明るい時間にお酒飲むの、好きなんだよね」
時刻はまだ16時過ぎ。傾いた太陽が、お台場の海をキラキラと照らしている。
会場に入る際、一人に一枚ずつ配られたシートに座って大輝と乾杯した。
「このイベントは『STAR ISLAND』っていって、3Dサウンドを駆使した最先端ミュージック花火なんだ」
入った瞬間からまるで別世界にきたような気持ちになったのは音に囲まれたせいかと気づき、大輝の説明に余計にわくわくした。
「初めての開催だから、実は僕もまだはっきりはわからないけど、とにかく今までの花火大会とはまったく違うから」
熱っぽく語る大輝に気押されながら、ヨシミはサンダルを脱いで砂浜の感触を楽しんだ。
「あ、いいね。俺もハダシになろうかな」
そう言って笑う大輝は、今までになく親近感が持てた。この開放的な雰囲気のせいか、会話もいつもより盛り上がり、気付けばずっと笑っていた。
そうしている内に、光のライティングショーが始まり会場の雰囲気が一気に変わった。思わず大輝と目を合わせ、このわくわくを共有する。
鳥が、まるで自分を包み込むように飛んでいるのではないかと思わせる3Dサウンド。花火と音楽に合わせ、シーンごとにダンスや水圧で空を飛ぶパフォーマンス。会場にせせり出たステージで繰り広げられるファイヤーパフォーマンス。
海上で打ち上げられる花火と、音楽や光や地上のパフォーマーなどが、見事にシンクロしている。
ヨシミは、全身の毛穴が開くような驚きと感動を覚えた。
「ほんとだ。思ってたのとぜんぜん違う!」
興奮気味にヨシミが言うが、大輝からは何も反応がない。不思議に思い隣を見ると、彼は目を輝かせながら無言で花火とパフォーマンスに見惚れていた。
その純粋な顔があまりに意外で、ヨシミの胸は大きく震えた。
気がつけば、ヨシミは彼の横顔をじっと見ていた。それに気付いた大輝もヨシミを見て、思わず数秒間、二人は見つめ合う。
先に目を逸らしたのは大輝だった。
「あ、ヨシミちゃん、寒くない?よかったら、これ使って」
動揺を隠すように言う彼は、自分のトートバッグからチェック柄のブランケットを取り出した。
「え、わざわざ持ってきてたの?気が利くんだね。ありがとう」
ちょうど日が沈み、肌寒くなってきた時だった。
受け取ったブランケットからは、石鹸のような太陽のような心地良いにおいがした。そのにおいは、「どうせふわふわした生活を送ってるんだろうな」と勝手に抱いていた大輝のイメージを大きく覆した。
ヨシミがブランケットを広げていると、若い夫婦が連れている小さな男の子を見て、大輝が目を細めた。
「大輝くんって子ども、好きなの?」
「うん、大好き。結婚したら何人でもほしい」
満面の笑みで答える大輝を見て、ヨシミの胸はもう一度大きく震えた。
―大輝くんって、もしかして超結婚向きの人だった……?
沢山の男性を見て養ったつもりだった「男性振り分けスキル」を、ヨシミはこの時初めて疑った。
代わりに、予感のようなものがあった。うまく言葉では言えないが、今年の夏は、自分の人生にとってとても重要なことが起こるような、そんな予感だ。
イベントは、クライマックスへ向けて盛り上がる。体中に響く音楽、目の前に広がる極彩色の花火。パフォーマーたちの動きはキレが衰えるどころかより研ぎ澄まされている。
その時、砂の上に置いていたヨシミの手に、大輝の温かい手がかぶせられた。
「ヨシミちゃん、またデートに誘っていいかな」
花火のあかりで左半分だけが照らされた大輝の顔はとても真剣で、ヨシミは言葉を発する前に、大きくこくりと頷いた。
(Fin)
大輝とヨシミが距離を縮めたデートの詳細はコチラ!
■イベント概要
『STAR ISLAND』
開催日 2017年5月27日(土)
開場時刻 16時(閉場21時予定)
開催場所 お台場海浜公園内
チケットの購入や詳細は、STAR ISLANDの公式HPをご確認ください。