東京・ホテルストーリー Vol.3

東京・ホテルストーリー:23歳の女が経験した、健全とも不純とも言えない不思議な一夜

東京の女には、ホテルの数だけ物語がある。

「ホテル」という優雅な別世界での、非日常的な体験。それは、時に甘く、時にほろ苦く、女の人生を彩っていく。

そんな上質な大人の空間に魅了され続けた、ひとりの女性がいた。

彼女の名は、皐月(さつき)。

これは、東京の名だたるホテルを舞台に、1人の女の人生をリアルに描いたストーリー。

埼玉出身のごく普通の女子大生だった彼女の人生は、少しずつ東京色に染まっていく。社会人になった皐月は、年上の恋人と念願の『パーク ハイアット 東京』ステイの夢を果たしたが...?


52階の『ニューヨーク バー』は、私が想像していたよりも、ずっと居心地のいい場所だった。

多少の敷居の高さはあれど、いったん腰を落ち着けてしまえば、ほどよい薄暗さ、ほどよい人のざわめき、ほどよい音量のジャズの生演奏のすべてが、こわばった緊張を優しく解いてくれる。

異国の歌手の甘い歌声と、映画“ロスト・イン・トランスレーション”のイニシャルである「L.I.T.」という甘酸っぱいカクテルに酔い始めると、緒方さんに何時間も待ちぼうけを食らった痛みも次第にやわらぎ始めた。

23歳の私にとっては一大イベントのホテルステイも、経験値豊かな大人の彼にとっては、取るに足らない日常の一部なのかも知れない。

一回り以上も年の離れた関係なんて、そんなものだろう。

必要以上に踏み込んだり、丸裸の心で接しても、きっといいことなんてない。甘えられるときだけ、若い女らしくベッタリと甘えていれば、物事は簡単に進む。

「もしかして、誰かに待たされてるの?」

豊さんに突然話しかけられたのは、ちょうど私の沈んだ心が、どこかに吹っ切れたときだったと思う。

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