二子玉川の妻たちは Vol.14

二子玉川の妻たちは:コーチングにハマる妻の闇。彷徨う妻が掴むのは救いの手なのか?

結婚は、女の幸せ。

そう考える種類の女にとっても、結婚は必要条件に過ぎない。

結婚しただけでは満たされない。女たちの欲望は、もっと根深いものだ。

夢だったおうちサロンをオープンし浮かれる由美。しかし同じマンションの最上階にカリスマサロネーゼ・マリが越してきて出鼻を挫かれる。

1年が経ち人気サロンの仲間入りを果たす由美。一方マリは、転写シート販売という手法で頂点の座を守ろうとする。

マリに対抗すべく、由美も転写シート販売を開始するが、マリから宣戦布告を意味する内容証明が届いてしまった。


幸運が向こうからやってくる?


「由美先生、大丈夫ですか?」

おうちサロンBrilliantでのレッスン中、開業当初から通ってくれている生徒の松浦さんこと松浦梨沙が、由美を心配そうにのぞき込んだ。

「嫌だ、ごめんなさい。ちょっと疲れているみたいで。」

慌てて笑顔を取り繕うが、その表情が強張っているであろうことが自分でもわかる。

あの日から、ずっとこうだ。

マリから届いた内容証明郵便。その書面は由美に、マリの販売する転写シートのデザイン模倣および類似品の販売を即刻やめるよう、求めていた。

由美はマリのデザインを模倣などしていない。言いがかりだ。

そう思った由美は、すぐに知人を通じて弁護士に相談。事実確認をした弁護士も、由美の主張どおり権利侵害に当たるような案件ではない、と言ってくれた。

大事には至らないだろうが、それにしたって気がかりである。

それに…言い合いをしてしまった夜から夫・雄太との関係もぎくしゃくしている。うまくいかないことというのは、どうしてこうも重なるのだろう。

「先生。これ…良かったら使ってください。」

浮かない顔をしている由美に、梨沙がバッグから小瓶を取り出し笑顔で手渡す。中には、薄いグリーンの液体のようなものが入っていた。

由美は直観的にこれを手にしてはならない、と感じ手を引っ込める。

しかし梨沙は由美の手のひらに小瓶を包ませ、何か特別な秘密でも打ち明けるように声を潜めてこう続けるのだった。

「このオイルを付けていると、幸運が向こうからやってくるの。」

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