2017.01.26
私、港区女子になれない Vol.1頑張った先に、幸せはあるの―?
慶應義塾大学卒業後、大手広告代理店に就職し、エリート街道をひた走る篠田涼子・29歳。欲しいものは、自分で手に入れてこそ意味がある。そう信じて努力を重ねてきた。
しかしある女との出会いをきっかけに、心に疑問が浮かぶようになる。自分で努力することなく男に頼り、男の愛を利用して生きる女、香奈。
仕事に邁進する高学歴女子と、男に頼る港区女子。
女として賢いのは、涼子か、香奈か。一体どっち?
30歳までに、バーキンを持つにふさわしい自分になる。
「才色兼備」
涼子の大好きな言葉だ。女性にとって、最高級の賛辞だと思う。
見た目だけの女なら、世の中に溢れている。特に、東京には。けれど、美しい容姿にプラスして優れた知性を併せ持つ女は、一部に限られる。
慶應義塾大学卒業後、誰もが名を知る広告代理店に就職を決めた篠田涼子は、その一部の選ばれし女に属するはずだ。
バリバリ仕事をして高給を稼ぎ、おしゃれも遊びも一流。東京の中心で活躍する代理店ウーマンに、才色兼備という形容詞はぴったり当てはまる。
オフィスエントランスを抜け、エレベーターホールの鏡に映る自分の姿を見て、涼子は満足げに微笑んだ。
―私が歩んできた道は、正しかった。
すらりと伸びた手足、すっと鼻筋の通った顔立ちは天から与えられたものだが、自信に満ちた微笑みも、涼しげでありながら意志の強さを感じさせる瞳も、努力して成功体験を積んできたからこその涼子の生き様が現れている。
営業職として7年。着実にキャリアを積み重ね、社内外からの信頼も厚い。30歳を目前にして、ついに先日同期で初めて大型コンペのチームリーダーも任された。
涼子は、心に決めていることがあった。
―30歳の誕生日に、自分で稼いだお金でHERMESのバーキンを買う。
バーキンを手に入れる。それだけなら、これまでにもチャンスはあった。
しかし涼子は、ただブランドバッグを振りかざす女になりたいわけではない。高級品は、身に着けるのに相応しい自分になって手に入れるからこそ、価値があるものだから。
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