25時の表参道 Vol.9

25時の表参道:何でアイツばかり評価される?社会人3年目の同期格差と、男の嫉妬

美月「今日の目的は、この男を気持ちよくさせることじゃない」


その日は、梨花と梨花の遊び仲間の女の子、それに藤堂博之の会社の仲間数人。合計10人くらいの大所帯となった。

21時から始まった会だったが、彼は1時間ほど遅れてやってきた。

「お!社長が来たぞ!」

藤堂博之が経営するバーの従業員だという若い男が、大声で叫んだ。彼は苦笑いしながら、それでも慣れた様子でウィスキーを注文した。

やり手の飲食店経営者、というくらいだからもっと華やかな感じの人を想像していたけれど、黒ぶちの眼鏡をかけて少し長めの髪を真ん中分けしたその男は、肩書のイメージより数段地味だ。

「こんばんは。美月です。」

バーボンの水割り(普段は絶対飲まないけれど、場の雰囲気に合わせて仕方なく飲んでいる)を片手に、彼の隣に座った。

「どうも」

藤堂博之は、それだけ言って黙々と飲み始める。

「よく雑誌でお見かけします。藤堂社長が新しく出した白金のお店、私もこの間行きました。」

これだけ話しても、彼は特に反応しない。こうやって近づいてくる女は嫌というほど見てきた、そんな感じだ。

死ぬほど感じは悪いが、仕方ない。目的はこの男を気持ちよくさせることじゃない。本題に入ってしまおう。

「…藤堂さんの奥さんて、藤堂静香さんですよね?」


ウィスキーを持つ手が止まり、右眉がぴくりと動いたのを、私は見逃さなかった。

「奥さん、同じ会社なんですけど、私の彼氏と付き合ってるんです。」

その日初めて、藤堂博之は私と目を合わせた。

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