嫉妬。
されると面倒な一方で、病み付きになる中毒性を女にもたらすこともある。
裏を返すと、される側が特別であることの証。
何も取り柄がない女が嫉妬されることは、まずない。
嫉妬は、堂々と買ったほうが、人生、オモシロイ。
テレビ局に勤務する華子(27歳)は、ある日突然広報部に異動が決まった。広報部には”鋼の女”と恐れられる越野部長がおり、華子は毎日容赦ないダメ出しを受けながら日々奮闘しているが……?
地味な華子の身に起こった、華やかな変化
華子はとび跳ねたい気分だった。
「ダサい」「そんな格好で会社に来ないで」と、容赦ない言葉を散々投げてきた鋼の女・越野部長。
華子が『MSGM』のワンピースを着て出社した日、その越野部長が右眉をピクリと上げたのを、華子は見逃さなかった。
彼女は足を止めて華子の全身を見ると、何も言わずにまたすぐ資料に視線を戻し、いつもの細いハイヒールを鳴らして去っていった。だが、華子は確かな手ごたえを感じていた。右の眉の動きはその証拠に違いない。
この日を境に、広報部に異動して以来“ダサい元AD”としか見られず、部内でも浮いた存在だった華子に大きな変化が訪れた。明らかにまわりの反応が変わり、態度も変わったのだ。
―なんてゲンキンな人たちなの……!
あからさまな態度の変化に納得はできないものの、悪い気はせず「名前の割に地味」と言われていた華子の日常が少しだけ華やいだ。
さらに、華やかさを加速させるような出来事が起こった。報道局に所属し、華子より2歳年上で将来有望と期待されているイケメン・伊原から食事に誘われたのだ。
広報局に来た伊原は、同期の男性と話していたが、華子が席を立ったタイミングを見計らい、自然に声を掛けてきた。つるりと滑らかな肌と、ほど良く引き締まった身体を持つ長身の男だ。
「よかったら、番組制作の現場の話を聞かせてくれない?今やってる仕事の参考にさせてもらいたくてさ。どこかレストラン予約しとくから」
そうやって臆することなく、彼は強引に誘ってきた。