嫉妬を買う女:「あなたダサいわね」鬼上司にダメ出しくらう“華やかさなき”華子27歳
嫉妬。
されると面倒な一方で、病み付きになる中毒性を女にもたらすこともある。
裏を返すと、される側が特別であることの証。
何も取り柄がない女が嫉妬されることは、まずない。
嫉妬されてこそ一流、という言葉もあり、口では鬱陶しいと言いつつも、女の妙薬であることに違いない。
嫉妬は、堂々と買ったほうが、人生、オモシロイ。
突然放り込まれた、華やかな世界
広報局のフロアに来て、華子はうろたえていた。
―せめて、スカートでくれば良かった……。
後悔先に立たずとはまさにこのこと。朝、クローゼットの中身をひっくり返すようにして決めたコーディネートだが、やはりここの女たちと比べると、華子には華やかさが微塵もない。
この数年、オシャレをさぼってきたツケがきっちり回ってきたのだ。
華子は、テレビ局のADとして忙しく働く27歳。だがこの春に異例の人事がくだった。それは、広報局への異動だ。
華子が配属されたのは広報局の中でも特に華やかな部署、広報部。これまで華子がいた現場とは対極のような世界だ。
さらにここには、陰で『鋼の女』と恐れられる越野部長がいる。有能だが、仕事に厳しく部下に対しても容赦ないと評判の40代半ばの女性だ。常に隙がなく、どんなに忙しい日が続いてもメイクもファッションも完璧。
越野部長の髪が乱れた姿も、7cm以下のヒール姿も、シワの入った洋服を着ている所も、誰も見た事がない。
華子は、何度かすれ違ったことがある越野部長の、まっすぐ前だけを見る強い目を思い出して、大きな溜息を吐いた。
―はぁ……気が重い。。。
広報局のドアの前でガックリ肩を落としていると、華子の背中に声がかかった。
「ちょっと、そこよろしいかしら?」
紛れもなく、鋼の女・越野部長の声だ。